科学本の言葉–11–(村上春樹の言葉)
「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです。」――村上春樹
上記の言葉が記されているのは、『睡眠の科学 なぜ眠るのかなぜ目覚めるのか』。この本は、睡眠と覚醒の脳内メカニズムを解説したもの。
睡眠には、大別すると、「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」がある。この二つの状態は、大きく異なっているらしい。覚醒と睡眠はまったく異なる状態だが、それと同じくらい「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」の状態は異なっているという。
睡眠を客観的に観察するとき、生理学的な重要な指標が「脳波」だそうだ。そして、「レム睡眠」のときの脳波は、覚醒時と似ている。『睡眠の科学』では、つぎのように記している。
「レム睡眠時の大脳皮質は覚醒時と同等か、あるいはそれ以上に活動しているため、脳波は覚醒時と非常によく似た、低振幅の速波である」。ただし、「身体と脳の間の情報交換をカットした状態」だそうだ。
「覚醒」「ノンレム睡眠」「レム睡眠」の違いを、 『睡眠の科学』では、 こう喩えている。「それはちょうど、コンピューターがオンでインターネットにもつながれている状態(覚醒)、スリープモードの状態(ノンレム睡眠)、そしてオフラインで使っている状態(レム睡眠)の3つにあたると考えてよい」と。
そして私たちは、「レム睡眠」のときに、あの鮮やかで奇妙な夢を見ているらしい。
ヒトは眠ると、通常ではまず「ノンレム睡眠」に入る。ノンレム睡眠にはいくつかの段階がある。しばらくすると「レム睡眠」に入り、あの鮮やかで奇妙な夢を見る。2つの状態を何回か繰り返し、朝、私たちは目覚める。
「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです。」
「覚醒」に入った私たちは、今度は、現実と呼ぶこの鮮やかで不可思議な夢を見る。
そして、ふたたび「ノンレム睡眠」に入る。このようなことを繰り返し、いつか、大いなる眠りに入る。
『睡眠の科学 なぜ眠るのかなぜ目覚めるのか』の各章の扉には、その章題とともに睡眠にまつわる言葉が置かれている。上記の村上春樹の言葉は、第5章の扉にある。
- 著 者:
- 櫻井武
- 出版社:
- 講談社