夢を叶えるために脳はある
著 者:
池谷裕二
出版社:
講談社
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進化しすぎた脳
著 者:
池谷裕二
出版社:
講談社
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単純な脳、複雑な「私」
著 者:
池谷裕二
出版社:
講談社
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意識の川をゆく
著 者:
オリヴァー・サックス
出版社:
早川書房
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これが物理学だ!
著 者:
ウォルター・ルーウィン
出版社:
文藝春秋
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快感回路
著 者:
デイヴィッド・J・リンデン
出版社:
河出書房新社
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「免疫」の本、どれを読む? 自己を守る複雑かつ巧妙なしくみ

テーマ案内『「免疫」の本、どれを読む? 自己を守る複雑かつ巧妙なしくみ』メイン画像

免疫のシステムは、食細胞などが担う「自然免疫」と、B細胞やT細胞が中心となる「獲得免疫」に大別されている。自然免疫と獲得免疫は巧みに連動し、病原体などの異物から私たちのからだを守っている。

しかし、自己を守るはずの免疫が自己を攻撃してしまう場合がある。自己免疫疾患は、自己と非自己の境界が明瞭ではないことを浮き彫りにしている。「自己」とは何かといった哲学的な問いも生まれてくる。

このような複雑かつ巧妙な免疫は、どのように進化してきたのだろうか。その観点からの考察も知的好奇心を掻き立てる。

がん免疫療法やワクチンなど免疫学の知見を医療に役立てる試みがなされてきたが、免疫学はどのように発展してきたのか。免疫の謎に挑んできた科学者たちのストーリーも興味をそそる。多くの日本人科学者が貢献している。

免疫をテーマにした書籍には多彩な話題が登場する。このレビューでは、免疫に関する知識を得られる一般向けの本をご紹介していきたい。(免疫力アップなどの健康ノウハウ系の本は取り上げていない)。

免疫に関する知識を得られる一般書

一般向けの入門書としておすすめの本『新しい免疫入門 自然免疫から自然炎症まで』

おすすめレビューにも書いたが、本書の魅力は、「免疫反応の流れがよくわかるように」解説されているところ。1~4章で、「自然免疫から獲得免疫が始動され、さまざまな免疫細胞が協力して病原体の撃退にあたるストーリーを説明」している。ここまでの100ページ程度で、免疫反応の流れを大まかに把握できるのがとても良い。また、「TLR(トル様受容体)」を一般向けに詳述していること、自然炎症を解説していることも本書の特徴といえる(著者の一人・審良静男らは、TLRの機能の多くを明らかにしている)。なお、免疫学研究の歴史は取り上げていない。(初版を読んでレビューを書いた。2024年に第2版が出ている)。

【ブルーバックス】
新しい免疫入門
著 者:
審良静男/黒崎知博
出版社:
講談社
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「免疫の進化」も取り上げている、読みやすい入門書『新しい自然免疫学 免疫システムの真の主役』

自然免疫が中心だが、獲得免疫も含めて免疫システムについて幅広く解説している入門書的な一冊で、免疫学研究の歴史を軸に見ていく。読みやすさという観点だけでいえば、上述の『新しい免疫入門』よりもスムーズに読み進められる。また、「免疫の進化」を取り上げているのが特徴のひとつで、進化に興味があるならこの解説もきっと楽しめる。監修は審良静男研究室なので、本書も「TLR」を一般レベルで詳述している。

【知りたい!サイエンス】
新しい自然免疫学
著 者:
坂野上淳
出版社:
技術評論社
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ちなみに、『新しい免疫入門』(2014年出版)、『新しい自然免疫学』(2010年出版)と、どちらも「新しい」がついているが、これは1990年代後半からの「自然免疫」に関する新たな発見によって、それ以前の免疫学の考え方が大きく変わったことを表している。

一般の教養レベルとして十分な知識が得られる『小説みたいに楽しく読める免疫学講義』

免疫学の研究の歴史を辿り、免疫のしくみを解説し、その後でアレルギー・自己免疫疾患、がん治療における免疫療法などの話題を紹介している。免疫にまつわる謎を「問」として示し、その謎を解き明かしていく、という形式で説明している。実験の解説も交えながら科学者たちの発見を紹介しているのが本書の特徴のひとつ。もし免疫の知識ゼロで、実験の説明のある一般向けの生物学の本を読んだことがなければ、読み進めるのがややつらいかもしれないが、そのぶん得られる知識は多い。一般の教養レベルとして十分な知識が得られる一冊。

【単行本】
小説みたいに楽しく読める免疫学講義
著 者:
小安重夫
出版社:
羊土社
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免疫にまつわる読ませる物語をお探しの方におすすめの本『美しき免疫の力 人体の動的ネットワークを解き明かす』

著者は、免疫にまつわる探究をした数多の科学者たちの挑戦を、読み応えのある物語に仕立てあげている。本書では、自然免疫の発見、樹状細胞の発見、インターフェロンの発見、制御性T細胞の発見など、免疫にまつわるさまざまな発見の物語と、免疫の知見にもとづく新薬開発や、がん免疫療法の開発の物語を描いている。当サイトでは、免疫にまつわる読ませる物語をお探しの方におすすめの本として紹介している。

【単行本】
美しき免疫の力
著 者:
ダニエル・M・デイヴィス
出版社:
NHK出版
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免疫の進化に興味のある方におすすめの本『遺伝子が語る免疫学夜話 自己を攻撃する体はなぜ生まれたか?』

著者は自己免疫疾患を専門とする医師で、本書は自己免疫疾患やアレルギーがなぜ起きるようになったのか、遺伝学やバイオインフォーマティクスの知識を使って迫っていく。また、獲得免疫系はいつ出現したのか、現生人類ホモ・サピエンスとネアンデルタール人との「邂逅」など、進化の歴史に沿って免疫にまつわる多彩な話題を論じている。当サイトでは、免疫の進化に興味のある方におすすめの本として紹介している。

【単行本】
遺伝子が語る免疫学夜話
著 者:
橋本求
出版社:
晶文社
No image

古代から現代まで感染症に対する人類の取り組みを見渡せる『ウイルス、パンデミック、そして免疫』

ウイルスの種類や複製のしくみなど、ウイルスの基本的なことを述べてから、ウイルスはどのようにして現れ、パンデミックを引き起こすのかについて、新型コロナウイルス、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルスの例をあげて解説している。また、私たちの免疫機能はウイルスや微生物とどのように戦うのか、免疫学の発展の歴史を交えながら説明している。古代から現代まで感染症に対する人類の取り組みを見渡せるのが本書の魅力。

【ニュートン新書】
ウイルス、パンデミック、そして免疫
著 者:
アラップ・K・チャクラボルティー/アンドレイ・S・ショウ
出版社:
ニュートンプレス
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一般レベルで深く丁寧にサイトカインにまつわる説明を行っている『免疫「超」入門 「がん」「老化」「脳」のカギも握る、すごいシステム』

免疫の基本的な仕組みから免疫学の医療への応用まで解説している。サイトカインのシグナル伝達機構を一般向けに詳述するなど、一般レベルで深く丁寧にサイトカインにまつわる説明を行っているのが本書の魅力。書名はやさしい入門書のイメージだが、私の印象では読み応えのあるタイプの本。「細胞の老化」と「免疫の老化」の解説も興味を引かれる。

【ブルーバックス】
免疫「超」入門
著 者:
吉村昭彦
出版社:
講談社
No image

制御性T細胞の発見者である坂口志文が自身の研究の歩みを綴りながら、その発見の経緯や医療への応用を丹念に描き出す『免疫の守護者制御性T細胞とはなにか』

「免疫自己寛容の維持に中心的な役割を果たしている」制御性T細胞。本書では、その発見者坂口志文が、生い立ちから、「免疫自己寛容」の解明という研究テーマとの出会い、制御性T細胞の発見の経緯や医療への応用、将来展望まで丹念に描き出している。高校生も含めて、この分野の研究に興味をもっている方におすすめしたい一冊。当サイトでは、免疫学や生命科学の研究に興味がある方におすすめの本として紹介している。

【ブルーバックス】
免疫の守護者 制御性T細胞とはなにか
著 者:
坂口志文/塚﨑朝子
出版社:
講談社
No image

ベストセラーとなった多田富雄の代表作『免疫の意味論』

免疫学的な「自己」と「非自己」についての論考を軸とし、そこに免疫学に関する主要な話題を織り込んでいる。そして、個体の生命というその全体性に光を当てている。当サイトでは、自己とは何かを免疫学の観点から考えてみたい方におすすめの本として紹介している。

多田富雄には『免疫・「自己」と「非自己」の科学』という著書もあるが、「自己」とは何か、「非自己」とは何かといった哲学的な側面にフォーカスしているのは『免疫の意味論』。『免疫・「自己」と「非自己」の科学』では、免疫の仕組みの解説のほうに重点が置かれている。

【単行本】
免疫の意味論
著 者:
多田富雄
出版社:
青土社
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「PD-1抗体によるがん免疫療法」など、免疫を中心に生命科学や医療について幅広く論じる『がん免疫療法とは何か』

PD-1にまつわる研究・開発の歴史がよくわかる(「がん免疫療法」の解説に特化している本ではない)。内容については、書評ページを。

著者の本庶佑は、2018年に「免疫抑制の阻害によるがん治療法の発見」により、ノーベル生理学・医学賞を受賞している。『幸福感に関する生物学的随想』という本には、ノーベル生理学・医学賞受賞記念講演後にノーベル財団に提出した原稿が収録されている。本庶佑の著書のまとめはこちらから

【岩波新書(新赤版)】
がん免疫療法とは何か
著 者:
本庶佑
出版社:
岩波書店
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免疫は「生命と不可分の機能」であり「最も古く、最も普遍的な認知装置」という論を展開している『免疫から哲学としての科学へ』

本書では、免疫に関する科学の成果を検討し、免疫は「生物界に遍く存在し、生命と不可分の機能である」、「生命の根底を成す機能である認識と記憶を支える最も古く、最も普遍的な認知装置である」という論を展開し、さらに哲学的な考察を加えている。

【単行本】
免疫から哲学としての科学へ
著 者:
矢倉英隆
出版社:
みすず書房
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「免疫」の本、どれを読む?

ここで取り上げた以外にも免疫の知識を得られる一般書は多数あるが、現時点(2024年10月)において私は上述の本を読み、このテーマでの読書にとりあえず満足した。

免疫の本には自己と非自己の識別という哲学的な側面の話題がある。私はそこに興味を引かれていたので、多田富雄の代表作といわれるベストセラー『免疫の意味論』はとくに印象に残る一冊だった。自己とは何かを免疫学の観点から考えてみたい方には本書をおすすめしたい。

【単行本】
免疫の意味論
著 者:
多田富雄
出版社:
青土社
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進化は私が好んでいる読書テーマなので、『遺伝子が語る免疫学夜話 自己を攻撃する体はなぜ生まれたか?』(橋本求)も興味深く読んだ。おすすめレビューにも書いたが、書名の「夜話」という言葉が示すとおり、優れた語り手のお話を聞くように気楽に読み進めることができる一冊。

【単行本】
遺伝子が語る免疫学夜話
著 者:
橋本求
出版社:
晶文社
No image

一般向けの入門書としては、『新しい免疫入門 自然免疫から自然炎症まで』(審良静男/黒崎知博)をおすすめしている。(本書の初版を読んで書いているが)100ページ程度まで読めば、免疫に関する一般書を読みやすくなると思う。

【ブルーバックス】
新しい免疫入門
著 者:
審良静男/黒崎知博
出版社:
講談社
No image

免疫をテーマにした本は一般向けの解説でもややこしいと感じるかもしれない(私はそう感じた)。でも、つぎつぎに読んでいくと次第に用語に慣れてきて、読む進めやすくなってくる。上述の見出しをざっと眺めて、気になる本があれば何冊か読んでみてはどうだろうか。

初投稿日:2024年10月19日

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