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ブラックホールをのぞいてみたら
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皮膚感覚と人間のこころ
著 者:
傳田光洋
出版社:
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ブラックホールと星の進化

「ブラックホール」メイン画像

星は「進化」し、大質量の星はその最期にブラックホールになる

夜空に自ら光り輝く星々は、私たちからすれば永遠に存在しているように思える。しかし星にも、人と同じく誕生があり死があるという。星は長い歳月をかけて「進化」していく。

星の「進化」のカギを握るのは質量だ。大質量の星は、その最期に中心部が自身の重力によって急激に収縮していく。その収縮には際限がなく、アインシュタインの一般相対性理論によると、星は潰れて存在しなくなるという。つまり、体積ゼロ、密度無限大。(科学者は数学を用いて考えている)

星が消滅した異様な場所は、「時空特異点」と呼ばれている。

時空特異点にある質量によって、時空特異点の周囲には強い重力が及ぼされている。その重力によって、時空特異点を中心とする〝ある領域〟からは、宇宙最速とされる光でさえも逃れ出ることができない。つまり、何ものも逃れ出ることができない。この領域は、「ブラックホール」と呼ばれている。その領域の大きさは、質量によって変わってくる。

そして、ブラックホールとそれ以外の時空の領域とを分ける境界は、「事象の地平線」(事象の地平面)と呼ばれている。一般相対性理論が描き出す「事象の地平線」は、喩えれば県境のようなものらしい。

「ブラックホールの事象の地平線とは、固い表面を持つようなものではなく、国境線や行政区画のような見えないものである」(『ブラックホール アイデアの誕生から観測へ』/マーシャ・バトゥーシャク/地人書館)

事象の地平線を超えてブラックホール内に入ることはできるが、一度入ったら決して外に出ることはできない。つまり、「一方通行」だ。そして、事象の地平線を超えてブラックホール内に入ったものは、その中心すなわち時空特異点に向かって落ちていく定めだという。したがって、ブラックホール内にはほぼ何もないらしい。

すると、そこには一体何があるのだろう? 「事象の地平線」という境界は県境のように見えないものであり、ブラックホール内部にはほぼ何もない。実体といえるのは、周囲に重力を及ぼしている「時空特異点」だが、これは体積ゼロ、密度無限大。一般相対性理論によって描き出されるブラックホールは、このように奇妙な天体だ。大質量の星はその最期にどこかへ消えてしまうというのか?

星が消え去ったその場所は、一体どうなっているのだろうか。このようなブラックホールの存在は信じがたいものだが、この奇妙なものが宇宙に実在していることが、さまざまな証拠によって示されている。

その証拠として、2019年4月、ブラックホールシャドウの画像が公開された。その前には、2つのブラックホールが合体したときに放出された重力波が検出されている。それ以前から、ブラックホールの存在がさまざまな証拠によって示され、その実在は確実視されていた。

だが、ブラックホールの実在が確実視されるまでには、長い年月を要した。私たち一般に語られるブラックホール研究史は、とてもユニークな物語に満ち溢れている。どんな話題があるか、ざっと紹介してみたい。

第一次世界大戦の最中、ブラックホールを表す解が発見される

ブラックホールは、一般相対性理論という重力理論によって導き出されたもの。アインシュタインが一般相対性理論を発表したのち、カール・シュヴァルツシルトがその方程式を解いた。その「厳密解」は、ブラックホールを表す解だった。

こうしてブラックホールの概念の扉が開いたが、この時代にはまだブラックホールという言葉はなく、そして現代版のブラックホールの概念はまだ考えられていなかったという。

「ブラックホールの概念、もっと正確に言えば、その早期版はまだ揺籃期にあった」(『ブラックホール アイデアの誕生から観測へ』)

ブラックホールをテーマにした一般向けの本では、一般相対性理論とシュヴァルツシルトについて述べられる前に、ニュートンの重力理論が説明され、ニュートンの重力理論にもとづいて光が脱出できない「暗黒星」を予想した科学者たち(ジョン・ミッチェルおよびピエール・シモン・ド・ラプラス)について語られることが多い。

1930年代、スブラマニアン・チャンドラセカールは、白色矮星の質量に上限があることを導き出した

白色矮星とは星の最期の姿の一つ。私たちの最も身近な星すなわち太陽は、その最期に白色矮星になると考えられている。太陽ほどの質量の星は、その最期に白色矮星になるという。

太陽の進化を非常に大まかに書くと、こんな感じらしい。

現在、太陽の中心部では、水素の原子核(陽子)からヘリウムの原子核が作られている。これは、核融合反応。作られたヘリウムは、中心部に溜まっていく。

やがて(およそ50億年くらい先らしいが)中心部の水素が枯渇し、中心部の核融合反応は停止する。このとき、中心部にヘリウム、それを水素が取り巻く、という構造になっている。

中心部の核融合反応が停止すると、核融合反応による熱の発生がなくなるため、熱の圧力が重力に対抗できなくなり、星の中心部はそれ自身の重力によって収縮していく。

周囲の水素の層では核融合反応が起こり、作られたヘリウムは中心部に落ちていく。中心部の重力が増大する。中心部では収縮が続くが、外層は膨張して巨星となる。膨張によって表面の温度が下がるため、赤くなる。これが、「赤色巨星」と呼ばれる段階。

中心部は収縮して温度が上昇している。中心部の温度がおよそ1億度に達すると、中心部ではヘリウムの原子核から炭素の原子核が作られる核融合反応が始まる。アルファ粒子(ヘリウム4の原子核)が3つ融合すると、炭素の原子核が作られる。作られた炭素は中心部に溜まっていく。炭素の原子核にアルファ粒子が1つ融合すると、酸素の原子核になる。

中心部のヘリウムが枯渇すると、中心部には炭素や酸素、その周囲をヘリウムが取り巻き、さらにそれらを水素が取り巻く、という構造になっている。核融合反応が停止した中心部は、それ自身の重力によって収縮していく。ふたたび周囲における核融合反応の段階に入り、外層は膨張する。

中心部は収縮していくが、太陽ほどの質量では、中心部の核融合反応はこれ以上進まない。

中心部の収縮は、地球ほどのサイズで止まる。「電子の縮退圧」という量子力学的な圧力が、重力に対抗するようになる。外層は離れており、むき出しになった中心部は「白色矮星」と呼ばれている。やがて白色矮星は冷えて、暗くなっていく。

つまり白色矮星とは、「電子の縮退圧」によって自身の重力に対抗している星だ。電子の縮退圧と重力とが釣り合っている。

さて、1930年代の話題。

スブラマニアン・チャンドラセカールは、白色矮星の質量に上限があることを導き出した。「電子の縮退圧」によって支えられる星の質量には限界があることを発見したのだ。

すると、この上限を超えている星はどうなるのか?

チャンドラセカールの「方程式では、閾値を超すとどうなるかが示されていた。恒星全体が崩壊し、無限大の密度になってしまうのだった」(『ブラックホール アイデアの誕生から観測へ』)

チャンドラセカールの発見は、当時の権威であったアーサー・エディントンによって否定された。このチャンドラセカールとエディントンの論争は、私たちに紹介される有名なエピソード。

今日では、チャンドラセカールの発見は「チャンドラセカール限界質量」として知られている。白色矮星の質量には上限があるという。しかし、この上限を超えた星のすべてが、際限なく収縮していくわけではない。星の中には、「中性子星」としてその最期を迎えるものがある。

1930年代に「中性子星」という概念を研究した科学者たち

太陽よりもはるかに重い星は、中心部で起こる核融合反応が鉄を作るところまで進む。中心部に鉄が作られると、中心部は重力によって収縮していく。そして、鉄は光分解という反応を起こして、最終的に陽子と中性子に分裂する。これは吸熱反応であり、熱が吸収されるため収縮を促進させる。さらに、陽子が電子を捕らえて中性子となる(この際にニュートリノが放出される)。この反応で電子が減って「電子の縮退圧」が弱まることも収縮を促進させる。こうして星の中心部は、急激に収縮する(「爆縮」)。この現象は、「重力崩壊」と呼ばれている。

中心部の爆縮は、(中心部の質量が〝ある上限を超えていなければ〟)半径10キロメートルほどで止まるという。今度は、「中性子の圧力」が重力に対抗するようになる。これが、中性子星。この過程で起こる、外層を吹き飛ばす大爆発は「超新星爆発」と呼ばれている。

つまり中性子星とは、「中性子の圧力」(「中性子の縮退圧」と「核力」のようだ)によって自身の重力に対抗している星。「中性子の圧力」と「重力」とが釣り合っている。

ちなみに〝「中性子の圧力」(「中性子の縮退圧」と「核力」のようだ)〟という記述は、『ブラックホールと時空の歪み』を参考にして書いた。(「中性子の縮退圧」とだけ記述されている本、「核力」とだけ記述されている本もある。)

また、「超新星爆発」は「超新星」とも呼ばれる。星の最期の大爆発は、地上では新星が現われたように見える。それは他の新星よりも飛び抜けて明るいため、「超新星」と呼ばれるようになった。つまり、超新星爆発=超新星だが、「主に、星の爆発という物理現象を指す場合は超新星爆発といい、観測されている天体を指す場合は単に超新星というのが一般的」(『星が「死ぬ」とはどういうことか』/田中雅臣/ベレ出版)だそうだ。

さて、1930年代の話題。

1930年代、まだ中性子星は観測されていない。この時代にフリッツ・ツヴィッキーは、超新星の莫大なエネルギー源を説明するために、中性子星という概念を提唱した。これに関する発表は、ウォルター・バーデとの連名でなされているが、中性子星というアイデアはツヴィッキーのものだと、『ブラックホールと時空の歪み』の著者キップ・S・ソーンは見なしている。ソーンは同書で、「ツヴィッキーにこのアイデアの名誉を(そしてバーデに主要な観測データを理解した名誉を)与え」ている。

また、ソ連のレフ・ランダウも、中性子星の概念を「中性子芯」という名で展開していた。「それは、太陽のような通常の星がその中心部に中性子星を抱え込んでいるかもしれない、というアイデアだった――ランダウはそれを中性子芯と呼んだ」(『ブラックホールと時空の歪み』/キップ・S・ソーン/白揚社)。ランダウは、太陽のような通常の星のエネルギー源として「中性子芯」の概念を提唱したが、彼のこの推測は誤りだった。

そして、J・ロバート・オッペンハイマーとジョージ・ヴォルコフとリチャード・トールマンは、中性子星の質量に上限があることを導き出した。「3人の頭文字をとって、一般相対性理論で星を議論する方程式をTOV方程式、彼らの見出した中性子星の最大質量をTOV限界と呼ぶ」(『ブラックホール・膨張宇宙・重力波』/真貝寿明/光文社)

TOV限界を超えると、星はどうなるのか? オッペンハイマーは、ハートランド・スナイダーとともに、この問題に取り組んだ。彼らの計算結果は、星は際限なく収縮し続けることを示していた。それは奇妙なものだったという。爆縮する星の表面にいる観測者から見ると、星は際限なく収縮して潰れてしまう(つまり、体積ゼロ・密度無限大の時空特異点が生じる)。しかし、星から遠く離れた場所にいる観測者から見ると、星の爆縮はやがてスローモーションになっていき、そして「凍結」されてしまう。このような奇妙なものだった。

(〝星から遠く離れた場所にいる観測者から見ると〟と書いたが、『ブラックホールと時空の歪み』では、「静的な外部基準系から観測した…」と記しており、その説明として「星の外部にいてつねに一定の周囲に留まっている観測者が見た…」と記している。「静的な外部観測者」とも書いている。また、『ブラックホール・膨張宇宙・重力波』では、「星からずっと遠くに離れた人が観測すると…」と説明。後者を参考にしてシンプルに書いた)

オッペンハイマーとスナイダーは、「重力場だけが存続する」と報じたという。(参考『ブラックホール アイデアの誕生から観測へ』)

彼らは、星がその最後に潰れてしまうことについては論じなかった。彼らは、「論文では、星の崩壊の最後がどうなるのかを議論することを賢明に避け、重力崩壊で崩壊する星の領域が「重力によって切り捨てられる」と表現した。」(『ブラックホール・膨張宇宙・重力波』)

オッペンハイマーとスナイダーの論文が発表されたのは、1939年のことだった。彼らは、「ブラックホールの現代的な説明を初めて確立した。しかし、それに気づく者はほとんどいなかった」(『ブラックホール アイデアの誕生から観測へ』)

第二次世界大戦が勃発し、ブラックホール研究は中断する。再開されるのは、1950年代に入ってからだった。

ジョン・アーチボルト・ホイーラーの探究

1950年代、ジョン・アーチボルト・ホイーラーは、「チャンドラセカールとオッペンハイマーとヴォルコフによって端緒についた星の墓場の探究を完成させることに取りかかった」(『ブラックホールと時空の歪み』)。その研究は、B・ケント・ハリソンと若野省己とともに行われた。

ホイーラーは、最初、オッペンハイマーとスナイダーの結論を否定していた。しかし転向して、「熱烈な支持者」(『ブラックホールと時空の歪み』)となる。デイヴィッド・フィンケルスタインによる発見(1958年)と星の爆縮のシミュレーションが、重い星の爆縮によってブラックホールが生じることをホイーラーに確信させたという。

さて、〝重い星の爆縮によってブラックホールが生じる〟という言葉を読んで、(上のセクションの)〝星から遠く離れた場所にいる観測者から見ると、星の爆縮はやがてスローモーションになっていき、そして「凍結」されてしまう〟というのはどういうことなのか、と気になっている方もいるのではないだろうか? このことに関する『ブラックホールと時空の歪み』の記述を紹介したい。

「光が重力の手から逃れるのがきわめて難しいために、遠くから見ると爆縮は無限に時間がかかるように見え、星の表面はけっして臨界周囲には達せず、地平はいつまでも形成されないように見える。天文学者には(……略……)、星はあたかも臨界周囲のすぐ外で凍結したように見えるだろう」(『ブラックホールと時空の歪み』)

しかし、星の爆縮は止まっていないという。

「爆縮する星は、ほんとうに臨界周囲をためらうことなく越えて収縮している。遠方からは凍結しているように見えるが、それは幻想である」(『ブラックホールと時空の歪み』)

ホイーラーといえば、ブラックホールの命名者としても知られている。ソーンの『ブラックホールと時空の歪み』によると、ブラックホールは当時「凍結した星」「潰れた星」などと呼ばれていた。「ソビエトの物理学者は爆縮で作られた天体を凍結した星と呼んだ」(同書)。これとは対照的に、西側では「潰れた星」と呼ばれたという。だが、「どちらの名称も満足できるものではなかった。どちらも、潰れた星を取り囲み、星の「凍結」という光学的な幻影を引き起こしている地平に特別な注意を払っていなかった」(同書)。それらに代わる名称をホイーラーは探したという。そして彼は、1967年後期に「完璧な名称を見いだし」、さりげなくその新しい名称(ブラックホール)を使い始めた。

(ちなみに、ブラックホールの命名者はホイーラーではない、という話が紹介されることもある。)

ホイーラーに関して、『ブラックホールと時空の歪み』の引用をもう少し続けたい。ホイーラーは、キップ・S・ソーン(『ブラックホールと時空の歪み』の著者)の指導教授。ソーンは、つぎのように記している。

「ジョン・アーチボールド・ホイーラーは、ブラックホールの芯を理解しようとすることがいかに大事であるかをわれわれに教えた。1950年代に彼は、理論物理学の聖杯として、重力による爆縮の「最終状態の問題」を提起した。一般相対論と量子力学の「火のような結婚」の一部始終を、それが教えてくれるかもしれない。…略…」(『ブラックホールと時空の歪み』)

爆縮する星がその最後に潰れて存在しなくなるという一般相対性理論の予測は、物理的に受け入れがたい。ホイーラーは、一般相対性理論がブラックホールの中心では破綻してしまうと見なし、それを超える理論を探究した。その理論は、一般相対性理論と量子力学を「結婚」させることで生まれる。「この結びつきから生まれる子供、量子重力の法則が特異点を支配しているはずだ、とホイーラーは主張した。」(『ブラックホールと時空の歪み』)

だが、マクロの世界を扱う一般相対性理論とミクロの世界を扱う量子力学は、「論理的に矛盾のないやり方で編み合わさっていない」(『ブラックホールと時空の歪み』)。平成の時代までに、一般相対性理論と量子力学を融合させた理論すなわち「量子重力理論」は完成していないようだ。ちなみに、量子重力理論の有力候補として私たち一般によく紹介されるのが、「超弦理論」(超ひも理論)

ここまで第二次世界大戦後の話題として、ホイーラーにまつわる話を紹介したが、ほかにも、「カー解」の発見、特異点定理、「ブラックホールのノーヘア定理」など、たくさんの話題がある。

そして、スティーヴン・ホーキングの話題がある。

量子重力理論のパイオニアのひとり、スティーヴン・ホーキングは、ブラックホールの描像を覆す理論を提唱した。ブラックホールは「蒸発」する

ホーキングは、「一般相対性理論」と「量子力学」を部分的に結合させたという。

一般相対性理論と量子力学を部分的に結合させると、ブラックホールはあたかも熱い物体のように放射を行なうという。これは、「ホーキング放射」と呼ばれている。ブラックホールは、ホーキング放射によって、徐々に質量を失い、「蒸発」してしまうという。

「ブラックホールからの放射という考えは、今世紀のもっとも偉大な理論である一般相対論と量子力学の両方に本質的にもとづいた予測の最初の例である」(『ホーキング、宇宙を語る』/スティーヴン・W・ホーキング/早川書房)

この考えをホーキングが発表したのは、1974年のこと。彼の報告は『ネイチャー』誌に載ったという。「ホーキングの発表と論文にはおもしろいタイトルが付けられていた。「ブラックホールが爆発する?」。彼が爆発と言ったのには理由がある」(『ブラックホール アイデアの誕生から観測へ』)。同書は、つぎのように続ける。

「量子力学をブラックホールに応用したとき、ホーキングはブラックホールがあたかも熱い天体であるかのように、粒子を発生させ、放出することを見出したのだ。結果として、ブラックホールは質量を減少させていき、ついには最後の爆発で消滅してしまう! その定義により、ブラックホールは呑み込んだものは出てこないとされてきたわけだから、この発見でブラックホールの物理学は大きくひっくり返ることになった。…略…」(『ブラックホール アイデアの誕生から観測へ』)

一般相対性理論だけを使うと、ブラックホールからは何も出てこない。したがって、「蒸発」もしない。一般相対性理論と量子力学を組み合わせると、ブラックホールは粒子を放出して「蒸発」する。そのような描像が数学的に導かれるようだ。

蒸発するとはいえ、星の爆縮でつくられたブラックホールが完全に蒸発するまでには、宇宙の年齢よりはるかに長い時間がかかると見積もられている。

しかし、ごく初期の宇宙で「軽量ブラックホール」がつくられた可能性があり、この「原初ブラックホール」(『ホーキング、宇宙を語る』)が、現在、ガンマ線を放出して「蒸発」している可能性があるらしい。

軽量ブラックホールにまつわる記述を、すこし紹介してみたい。

「太陽よりもはるかに小さい質量をもつブラックホールが存在する可能性も考えられる。このようなブラックホールは重力崩壊ではつくりだせない。質量がチャンドラセカール限界以下だからだ。……略……。軽量ブラックホールは、物質が巨大な外圧によって高密度に圧縮された場合にだけ生じる。このような条件は非常に大型の水爆でも起こりうる。……略……。もっと現実的な可能性は、ごく初期の宇宙の高温・高圧の中で、このような軽量ブラックホールがつくられたかもしれないということである。……略……」(『ホーキング、宇宙を語る』)

では、「原初ブラックホール」は観測できるのか。

「……略……原初ブラックホールがその生涯の大半を通じて放射しているガンマ線は探せるだろう。非常に遠方にあるために、大部分のブラックホールからやってくる放射は非常に弱くなっているだろうが、それらを足し合わせたものは検出できるかもしれない。……略……」(『ホーキング、宇宙を語る』)

ホーキングは、ブラックホールが熱い物体のように放射を行なうことを、スローガン的にこう記している。「ブラックホールはそれほど黒くない」(『ホーキング、宇宙を語る』)

そして、ホーキングといえば、ブラックホールのインフォメーション・パラドックスの話題がある。このブラックホールの情報問題を私たち一般にとても丁寧に解説しているのが、『ブラックホール戦争』(レオナルド・サスキンド著)だ。『ブラックホール戦争』の「はじめに」には、つぎのように書かれている。

「1976年に、スティーヴン・ホーキングは1ビットの情報をブラックホールへ投げ込んだらどうなるかと想像した。投げ込む情報は本やコンピューターでもいいし、1個の素粒子でもいい。ホーキングはこう考えた。ブラックホールは究極の落とし穴であって、情報のビットは外の世界から永久に失われる。この一見無害にみえる観察は、断じて無害ではなかった。それは、現代物理学が築いた建造物すべてをなぎ倒す恐れがあった。何か決定的にうまくいかない点があった。もっとも基礎的な自然法則である情報の保存が危機にひんしていた。関心を持った人たちにとって、ホーキングが間違っているか、300年の歴史を持つ物理学の中心が崩れてしまうかのどちらかだった。」(『ブラックホール戦争』/レオナルド・サスキンド/日経BP社)

ブラックホールの情報問題に興味を持ったら、『ブラックホール戦争』はきっと楽しめると思う。とても読み応えのある本だ。ただ、現在では入手困難になっている(2020年2月)

さて、ホーキングの話題は、『ブラックホール アイデアの誕生から観測へ』のつぎの記述を紹介して終わりにしよう。

「1970年代のホーキングは、今日へとつながるブラックホールの性質について議論を始めていた。量子重力理論のパイオニアとして足跡を残し、その後同僚の多くが重力と量子力学の意味深いつながりを知ることとなる。自然界のこれら異なる二つの法則が、まだ公式には統一されていないにもかかわらず、物理の聖杯ともいうべきこれらの統一が、いつしか達成できるかもしれないという基本的な兆しがある。物理学者のこうした野望に、最良のガイドとなるのがブラックホールなのである」(『ブラックホール アイデアの誕生から観測へ』)

ここまでは、理論の話題をざっと紹介してきた。かなり長くなってきたが、ここから観測の話題を紹介していきたい。

「電波天文学」の発展と「X線天文学」の幕開けにより、理論上の天体だった「中性子星」や「ブラックホール」が、この夜空に浮かび上がってくる

第二次世界大戦後、宇宙からの電波を観測する「電波天文学」が急速な発展を遂げ、また、宇宙からのX線を観測する「X線天文学」が幕を開けた。

電波天文学が幕を開けたのは、1930年代。カール・ジャンスキーが宇宙からくる電波をはじめて捉え、その後、グロート・リーバーが、「宇宙を電波で詳しく観測して「電波天文学」として発展させた」(『巨大ブラックホールの謎』/本間希樹/講談社)。同書は、「いわばピンボケ写真のような状態で電波の観測は始まった」という。そして、「ピンボケ写真しか撮れなかった電波天文学を劇的に変えたのが、電波干渉計」だそうだ。第二次世界大戦後、マーチン・ライルらのグループが、「現代の形の電波干渉計を開発して、電波天文学を大きく進歩させた」(同書)

X線天文学が幕を開けたのは、1962年のこと。X線天文学のパイオニアである小田稔は、その著書『X線天文学』で、つぎのように記している。

「X線天文学のはじまりは1962年のことである。マサチューセッツ工科大学のロッシ B. Rossiとアメリカン・サイエンス・アンド・エンジニアリング社のジャコーニ R. Giacconiたちのグループは、X線カウンターをのせた「エアロビー」とよばれる観測ロケットを大気圏外に送って、はじめて宇宙からくる強いX線をとらえたのである。」(『X線天文学』/小田稔/中央公論社[現・中央公論新社])

宇宙からくるX線は大気に吸収されてしまうため地上から観測することができない。そのためロケットや気球、人工衛星によって観測が行われた。X線観測用の初の人工衛星「ウフル」が打ち上げられたのは、1970年12月だった。

電波天文学とX線天文学と、光(可視光線)を観測する伝統的な天文学とを組み合わせることによって、さまざまな発見がなされた。

中性子星の存在を浮かび上がらせたのは、「パルサー」の発見だった

1967年、ケンブリッジ大学のジョスリン・ベルとアントニー・ヒューイッシュは、約1・3秒周期で繰り返し送られてくる電波のパルスをとらえた。これが最初に発見されたパルサーだった。このパルスはきわめて正確に繰り返された。だが、「ふつうの天体では、1秒という正確な周期をもつ現象は考えられない。」「天文学者たちは、はじめ、これはひょっとすると宇宙のどこかにいる高等生物、あるいは宇宙人が信号を送っているのではと考えた」(『X線天文学』)。その後、同様の天体がいくつも見つかってきたため、「いかに考えにくいことではあっても、これは天然現象、天体なのだと考えざるをえない」(同書)

科学者たちはそのメカニズムを考えたという。

「この秒の程度の周期の現象に対して、ただちに白色矮星や中性子星の脈動現象(ふくれたり、縮んだりする振動)が考えられた。白色矮星の脈動の周期は理論的な計算によれば秒の程度である。これはパルサーの周期とつじつまがあうようにみえる」(『かに星雲の話』第六話・小田稔/中央公論社[現/中央公論新社])。ところが、1968年、かに星雲のなかにパルサーが発見された。この通称かにパルサーは、1秒の30分の1という短い周期をもっていた。「こうなるとパルサーを白色矮星の脈動で説明することは無理になってきた。一方、中性子星の脈動の周期は100分の1秒以下と考えられるのでこれも無理である。」(『かに星雲の話』第六話)

パルサーの正体を解き明かす記述は、つぎのように続く。

「それでは小さく圧縮された高密度星の回転の周期はどうだろう。高密度星はもとの星から圧縮されて半径を縮めるときにもとの角運動量の少なくとも一部を保存するならば、たいへんな勢いで回転していることが想像されるのである。」「ところが、1秒の何十分の1という短い周期で白色矮星が回転したのでは遠心力によってちぎれてしまう。こうして、自転する中性子星ということに追いつめられてくるのである」(『かに星雲の話』第六話)

おもしろいことに、「かに星雲」は1054年の超新星の残骸として知られている。つまり、超新星残骸のなかに、中性子星が見つかったのだ。これは、1930年代の理論的予測のとおりだった。こうして、中性子星の存在が浮かび上がってきた。

ブラックホールがこの夜空に浮かび上がってくる物語

つぎの二つが有名な話題。一つは、X線天文学の初期から知られている有名な天体「はくちょう座X–1」がブラックホールと認定される話。もう一つが、クェーサーの発見。

このレビューでは、「クェーサーの発見」のほうを紹介したい。とても大まかに書くと、つぎのようなことが語られる。

1960年代初めには、マーチン・ライルらケンブリッジ大学のグループが作った「3Cカタログ」と呼ばれる電波源のカタログがあった。この3Cカタログの273番目の天体「3C273」が、私たちに紹介される最も有名なクェーサーだ。

シリル・ハザードらは、3C273が月によって隠される「掩蔽(えんぺい)」という現象を利用して、3C273の正確な位置を決定した。

その正確な位置を光の望遠鏡で観測したのが、マーチン・シュミットだった。そこにあるのは星のような13等級ほどの天体だったが、そのスペクトルは星のものとは異なっていた。また、この天体からはジェットのようなものが見えていた。ジェットが見えていることも普通の星とは違う。

シュミットはその奇妙なスペクトルの謎を解き明かし、3C273が約20億光年の彼方にあることをつきとめた。

推定した距離と見かけの明るさから「真の明るさ」が求められた。それは、普通の銀河の100倍ほどの異様な明るさだった。しかも、そのような莫大なエネルギーが、ごく狭いところから出ていた。

3C273以外にも同じような異様な天体があった。これらクェーサーの正体とは何かが議論され、さまざまなアイデアが出されたという。そのなかで現在受け入れられているのが、「超大質量ブラックホール」と「降着円盤」というアイデアだ。

じつは、ブラックホールには、太陽質量の数倍から数十倍ほどの質量をもつ「恒星質量ブラックホール」と、太陽質量の百万倍から数十億倍の質量をもつ「超大質量ブラックホール」(「巨大ブラックホール」とも記述される)とがある。

「恒星質量ブラックホール」は、先述したように、大質量の星の最期として理解されている。しかし、「超大質量ブラックホール」の形成過程は平成の終わり時点では、まだ謎に包まれているようだ。ブラックホール同士の合体説やガスの吸い込み仮説などが論じられている。

また、恒星質量ブラックホールと超大質量ブラックホールの中間の質量をもつ「中質量ブラックホール」(「中間質量ブラックホール」)も存在するのではないかと考えられており、それを示唆するような観測結果もあるという。「中質量ブラックホール」と名付けたのは、谷口義明ら。(参考:『宇宙はなぜブラックホールを造ったのか』/谷口義明/光文社)

さて、クェーサーの正体の話に戻る。くり返せば、クェーサーの正体は超大質量ブラックホールと降着円盤の組み合わせと考えられている。超大質量ブラックホールは(それ自身は暗黒天体だが)、その強大な重力によって周辺にあるガスを引き寄せ、その周囲にガス円盤(降着円盤)をまとい、とてつもなく明るく輝くことができる。もちろん明るく輝いているのは(ブラックホールではなく)降着円盤だ。

ちなみに、クェーサーのようにとてつもなく明るく輝くためには、恒星質量ブラックホールほどの質量では足りないそうだ(その理由は、たとえば、『巨大ブラックホールの謎』で説明されている)

銀河の中心に鎮座する「超大質量ブラックホール」

およそすべての銀河の中心には超大質量ブラックホールが存在していると考えられている。そして、超大質量ブラックホールには、活動性を示すものと示さないものがあるという。

銀河の中心に存在する超大質量ブラックホールがその周囲にガス円盤(降着円盤)をまとって活動性を示すものは、「活動銀河中心核」(または活動銀河核/Active Galactic Nuclei:AGN)と呼ばれている。上述したクェーサーは、活動銀河中心核の一種と考えられている。ほかにも、「セイファート銀河」など、多種多様な活動銀河中心核がある。

活動銀河中心核の分類は、非常に複雑だという。

「ちょうど、人間の顔が目、鼻、口といったわずか数個のパーツからなっているにもかかわらず、誰一人として同じ顔の人がいないように、活動銀河中心核も一つとして同じものがないくらい多様性に富んでいる」(『巨大ブラックホールの謎』)

このような活動銀河中心核(AGN)の多様性を簡潔に説明する「統一モデル」も考えられている。

さて、ここで、私たちの銀河系(天の川銀河)の中心部の活動性について紹介したい。

銀河系(天の川銀河)の中心に鎮座する超大質量ブラックホール候補天体は、「いて座Aスター」

「いて座AスターやM87のブラックホールは、クェーサーに比べるとずっと明るさが小さいことが知られています。このような活動銀河中心核の種族は低光度AGNと呼ばれ、おとなしめで目立たないタイプになります。しかし、宇宙全体では、大半の活動銀河中心核がこのタイプの暗いものであり、数の上ではクェーサーよりもずっと多いのです。」(『巨大ブラックホールの謎』)

銀河系(天の川銀河)の中心部の活動性は、クェーサーのような強い活動性は持たず、「ごくわずかな活動性」を持っているそうだ。(参考:『巨大ブラックホールの謎』)

では、銀河の活動性の違いは何によるのか。今度は、『宇宙はなぜブラックホールを造ったのか』の記述を紹介したい。

「じつは、1980年代後半から、銀河の活動性は銀河同士の合体と関連していると考えられるようになった。現在では、このアイデアを疑う人はいないほどだ。」(『宇宙はなぜブラックホールを造ったのか』)。銀河同士の合体の話は、『宇宙はなぜブラックホールを造ったのか』がおもしろい。

さて、そろそろ、この長いレビューを終わりにしようと思う。

観測の話題としては、「いて座Aスター」が超大質量ブラックホールであることを浮かび上がらせた研究もよく紹介される。ほかに、「超大質量ブラックホールと銀河の共進化」、ガンマ線バースト、など、多彩な話題がある。

そして、最初のほうで少し触れたが、いて座Aスターおよび楕円銀河M87の超大質量ブラックホールを観測した「EHT」(Event Horizon Telescope)の話題がある。2017年に観測が行われ、2019年4月に、M87の超大質量ブラックホールの「シャドウ」が公開された。長い歳月を経て、ついに、ブラックホールの実在が視覚的に証明された。

最後に

ざっと紹介しただけだが、それでもかなり長くなった。この長いレビューをここまで読んでくれた方なら、きっとブラックホールはおもしろい読書テーマになると思う。理論の話、観測の話、どちらも多彩な話題があるので、ブラックホールというテーマを追いかけるだけで、物理と宇宙のたくさんの知見に触れることができる。

以下に記すのは、このレビューの参考文献であり、私がこのレビューを書くまでに読んだブラックホール関連の本。どれも一般向けの本なので、ここまで読んでくれた方なら、どれか一冊手にとってみてはどうだろうか。

私なりのおすすめを交えて、それぞれの本の特徴を紹介したい。

(引用の際に、一部漢数字をアラビア数字に直した)

ブラックホール関連本

『ブラックホール アイデアの誕生から観測へ』

科学史が好きな方なら、まずはこの本を読むのが私のオススメ。ブラックホールの〝おもしろい読み物〟をお探しの方におすすめの本というレビューにも書いたが、説明されている物理の話がわからなかったとしても、物語としておもしろく読み進めることができる。そして読み終えた時には、きっとブラックホールのイメージが掴めている。

【単行本】
ブラックホール
著 者:
マーシャ・バトゥーシャク
出版社:
地人書館
No image

『ブラックホールをのぞいてみたら』

この本は、ブラックホールのイメージを〝効率よく〟とらえたい方におすすめ。たぶん、(私が読んだ中で)一番やさしいブラックホールの解説書。科学史にあまり興味がなく、ざっとブラックホールのイメージを捉えたい方の入門書として最適。ブラックホールのイメージを〝効率よく〟とらえたい方におすすめの本というレビューも書いた。

【単行本】
ブラックホールをのぞいてみたら
著 者:
大須賀健
出版社:
KADOKAWA
No image

『ブラックホールと時空の歪み』

一般向けブラックホール本の〝バイブル〟といえる一冊。一般向けの本に書かれるブラックホールの理論的な話のほとんどが、この本に書いてある。そして他の本に書いてないことが、いろいろと書いてある。ただし、そのぶんボリュームがあり、価格も高い。1997年の本だが、情報が古いのではないかという心配はいらない(私たち一般に紹介されるブラックホール物理の話は、本書以前の話がほとんどだから)。この本は読み物としても非常におもしろい。

【単行本】
ブラックホールと時空の歪み
著 者:
キップ・S・ソーン
出版社:
白揚社
No image

『ブラックホール・膨張宇宙・重力波』

書名の3つをテーマにしている本。ブラックホールの話題がとても要領良くまとめられている。とくに、ブラックホール解についての解説のところは必読(と私は思っている)。ただし、〝物理や宇宙の一般向けの本は難しそう〟と思っている方は、入門書としてではなく、2冊目以降に読んだほうがいいかも。重力波、ブラックホール、アインシュタイン方程式、に興味がある方で、〝ハードな一般向け解説書〟を好む方におすすめの本というレビューも書いた。

【光文社新書】
ブラックホール・膨張宇宙・重力波
著 者:
真貝寿明
出版社:
光文社
No image

『巨大ブラックホールの謎』

著者・本間希樹の名前は、2019年の「EHT」の会見で目にした方が多いと思う。この本は、EHTの話題を知りたい方はもちろん、超大質量ブラックホール(巨大ブラックホール)について知りたい方におすすめ。本書の特徴は、観測天文学者の視点(電波天文学者の視点)で、超大質量ブラックホールにまつわる観測の話題を紹介していること。第4章以降がおもしろい。超大質量ブラックホール(巨大ブラックホール)観測の話題に興味がある方におすすめの本というレビューも書いた。

【ブルーバックス】
巨大ブラックホールの謎
著 者:
本間希樹
出版社:
講談社
No image

『宇宙はなぜブラックホールを造ったのか』

ブラックホールの有名な話題を概観した一冊。とくに、「銀河の合体」にまつわる解説がおもしろい。「活動銀河中心核」(AGN)に興味をもったら必読(と私は思っている)。著者・谷口義明は観測天文学者なので、観測の話題に力が注がれている。

【光文社新書】
宇宙はなぜブラックホールを造ったのか
著 者:
谷口義明
出版社:
光文社
No image

『ブラックホールに近づいたらどうなるか?』

ブラックホールのたくさんの話題を〝網羅的に〟紹介している入門書。私が読んだ入門書的な本の中では、本書がブラックホール関連の話題を最も広くとりあげている(という印象が私の中にある)。イラストなども交えて、気軽な読み物という雰囲気に仕立てあげている。

【単行本】
ブラックホールに近づいたらどうなるか?
著 者:
二間瀬敏史
出版社:
さくら舎
No image

『ゼロからわかるブラックホール』

(上述した)同著者の『ブラックホールをのぞいてみたら』よりも、しっかりと物理の解説をしている入門書(もちろん一般レベル)。とくに「降着円盤」(ガス円盤)の物理を一般レベルで知りたい方には、この本がおすすめ。

【ブルーバックス】
ゼロからわかるブラックホール
著 者:
大須賀健
出版社:
講談社
No image

『ブラックホールを見る!』

書名のとおり、「見る」という観点からブラックホールを解説。ブラックホールをどのようにして「見る」のかを説明している。「X線で見る」「電波で見る」「可視光で見る」「赤外線で見る」 といった説明がある。ブラックホール周囲の超高温ガスが、波長の短いX線も、波長の長い電波も出すのはなぜか? そんな疑問をもったら読むといいかも。「岩波科学ライブラリー」

【岩波科学ライブラリー】
ブラックホールを見る!
著 者:
嶺重慎
出版社:
岩波書店
No image

『ブラックホールは怖くない?』

ブラックホールの物理を〝一般レベルでしっかりと学びたい方〟向きの本。『ブラックホールは怖くない?』が基礎編で、『ブラックホールを飼いならす!』が応用編。ブラックホールのまわりで生じる現象について〝一般レベルで学びたい〟方におすすめの本というレビューも書いた。学びの本。

【EINSTEIN SERIES】
ブラックホールは怖くない?
著 者:
福江純
出版社:
恒星社厚生閣
No image

『ブラックホールを見つけた男』

この本は、スブラマニアン・チャンドラセカールの伝記物語であり、また、「星の進化」の研究史にその名を刻んだ科学者たちの群像劇でもある。もちろんブラックホールについて知ることができるが、私は、この本をチャンドラセカールの伝記物語として読んだ。ボリュームがある本なので、チャンドラセカールの伝記物語に興味がないと読むのが、ややつらいかも。

【草思社文庫 上巻】
ブラックホールを見つけた男
著 者:
アーサー・I・ミラー
出版社:
草思社
No image

『ホーキング、ブラックホールを語る』

主な話題は、ホーキング放射によるブラックホールの蒸発と、ブラックホールのインフォメーション・パラドックス。ホーキングは有名なので、この本をブラックホールの入門書として読もうと思う方もいるかもしれないが、入門書向きではないと私は思う。この本は、ブラックホールの蒸発と、ブラックホールのインフォメーション・パラドックスに興味をもったら読むのが良いのではないだろうか。

【単行本】
ホーキング、ブラックホールを語る
著 者:
スティーヴン・W・ホーキング
出版社:
早川書房
No image

『ブラックホール戦争』

「ブラックホールのインフォメーション・パラドックス」を知るうえでは、この本が最適。たぶん、一般向けの本で本書以上に丁寧にブラックホールの情報問題を説明している本はないし、今後も出版されないのではないだろうか。そう思わせるほど丁寧な解説。現在では、入手困難になっている(2020年2月)

【単行本】
ブラックホール戦争
著 者:
レオナルド・サスキンド
出版社:
日経BP社
No image

『重力とは何か』

この本もブラックホールの情報問題を一般向けに解説している。新書のわずかな紙面を割いて簡潔に解説。ブラックホールをテーマにした本ではないが、重力というテーマがとても面白いことを教えてくれる本。著者・大栗博司は、超弦理論(超ひも理論)の専門家。

【幻冬舎新書】
重力とは何か
著 者:
大栗博司
出版社:
幻冬舎
No image

『ホーキング、宇宙を語る』

世界的ベストセラーで、おそらく私たち一般に最もよく知られている宇宙の本。宇宙像の変遷を辿ることから始めて、量子重力理論のパイオニアのひとりである著者ホーキングの探求が描かれている。

【ハヤカワ文庫NF】
ホーキング、宇宙を語る
著 者:
スティーヴン・W・ホーキング
出版社:
早川書房
No image

『星が「死ぬ」とはどういうことか』

「超新星爆発(超新星)」の入門書的な一冊。超新星爆発の研究の歴史や最前線の話題を交えながら、超新星爆発を解説している。ブラックホールをテーマにしている本ではないが、超新星爆発に興味をもったら本書がおすすめ。超新星爆発(超新星)を知りたい方におすすめの本というレビューも書いた。私の印象では、入門書的ではあるが、一般書としては読み応えのある部類に入る。

【Beret science】
星が「死ぬ」とはどういうことか
著 者:
田中雅臣
出版社:
ベレ出版
No image

『僕らは星のかけら』

「原子の物語」と「星の物語」。星はどのようにして光り輝いているのか、あまたの元素はどのようにして誕生したのか、その探求を謎解き風の構成で語り尽くした一冊。ブラックホールをテーマにした本ではないが、星の進化に興味をもった方におすすめしたい本。元素の起源や星が輝く仕組みに興味がある方におすすめの本というレビューも書いた。

【SB文庫】
僕らは星のかけら
著 者:
マーカス・チャウン
出版社:
SBクリエイティブ
No image

『ブラックホール 一般相対論と星の終末』

ブラックホールをテーマにした本で、専門書と一般書の中間くらいのレベル。数式がたくさん出てくる本だが、言葉のところだけ拾って読むこともできる。私は、数式は飛ばして言葉のところだけ読んだ。〝一般書では物足りないが、専門書は読めない〟方は、手にとってみると良いかも。1976年に中央公論社より刊行されたものが、2009年に文庫化された。

【ちくま学芸文庫】
ブラックホール
著 者:
佐藤文隆/R.ルフィーニ
出版社:
筑摩書房
No image

『X線天文学』

X線天文学の歴史上の有名な天体、さそり座X–1、はくちょう座X–1、かに星雲などが、どのように研究されてきたのかが記されている。(この本が出版された1975年までの情報)。これらの天体の当時の研究について知りたかったら読んでみると良いかも。私が読んだ時点では、この本は入手困難になっていた。

【自然選書】
X線天文学
著 者:
小田稔
出版社:
中央公論社(現/中央公論新社)
No image

『かに星雲の話』

全六話からなる「かに星雲の話」。「専門を異にする」6人の著者が、かに星雲について論じている。かに星雲とその中心にある「かにパルサー」について、また超新星残骸について興味がある方は読んでみると良いかも(書いてあるのは、刊行された1973年までの話)。私が読んだ時点では、この本は入手困難になっていた。

【自然選書】
かに星雲の話
著 者:
石田五郎/大谷浩/森本雅樹/浜田哲夫/早川幸男/小田稔
出版社:
中央公論社(現/中央公論新社)
No image

『ブラックホールの科学』

本書の半分がイラストという「絵本仕立て」。ブラックホールを中心とした、天文学の入門書的な一冊。後半の約半分がブラックホールの話。印象としては、上述した『ブラックホールをのぞいてみたら』(大須賀健)よりもやさしい解説本だが、本書はブラックホールの本というよりは、天文学の入門書的な一冊。ブラックホールの本という印象を私はもっていない。私が読んだ時点では、この本は入手困難になっていた。

【単行本】
ブラックホールの科学
著 者:
羽馬有紗
出版社:
ベレ出版
No image
初投稿日:2020年02月28日

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