ユニークな宇宙講義を〝聞きたい〟方におすすめの本
すごい宇宙講義
- 著 者:
- 多田将
- 出版社:
- イースト・プレス
本書は、全4回の連続講演を元にした、臨場感あふれる、〝聞かせる〟宇宙講義。
(笑)という記述がたくさん出てくるユニークな語り口と、それにぴったりと合ったイラスト、また、ときおりアニメの話が登場するなど、気楽な読み物という雰囲気の本だ。そのような雰囲気のなかに、著者の科学への真剣さが、一本の芯のように通っている。そこが、この本の魅力だと思う。
気楽な読み物という雰囲気ではあるが、実のところ、さまざまな知見を得ることができる読み応えのある本だ。そして解説は、巧みな喩えを用いた、わかりやすい解説。
ただし、最初のテーマがブラックホールと相対性理論なので、ちょっと戸惑う感じの入口と言えるかもしれない。入口より、もっと奥のほう、出口付近がおもしろい。この本は、読み進めるほどにおもしろくなっていく本だと私は思っている。
著者の専門は、素粒子物理学。宇宙関連の知見だけでなく、素粒子関連の知見も得られる本であることも伝えておきたい。
本書は、「ブラックホール」「ビッグバン」「暗黒物質」「そして宇宙は創られた」の4つの章(と3つの長めのコラム)からなる。
最後に、この本についての著者の言葉を紹介したい。「じつは、僕は本書の中で、宇宙そのものの魅力ではなく、宇宙について人間がいかに考えてきたか、ということをお伝えしたいと思っているのです」
私は単行本を読んでレビューを書いた。文庫版は中央公論新社より出版されている。
初投稿日:2017年05月23日最終加筆:2022年12月27日