重力波、ブラックホール、アインシュタイン方程式、に興味がある方で、〝ハードな一般向け解説書〟を好む方におすすめの本
- 著 者:
- 真貝寿明
- 出版社:
- 光文社
エピソードが豊富で、また、一般書ではあまり見かけないハードな内容もある、そのバランスの良さが本書の魅力。
本書「3・2」節の見出しは「アインシュタイン方程式」。こんなふうに述べる。「これから本書の主役となるアインシュタイン方程式を紹介しよう」と。この節では、アインシュタイン方程式(重力場の方程式)の構造、この方程式を「解く」ということ、を解説している。解説の一部を引用してみる。
「アインシュタイン方程式は、空間がどう曲がっているのかを表す計量テンソルについての式である。計量テンソルは、空間の3方向と時間の合わせて四つの軸が、どのように長さを変えていくのかを表す量だ。(後略)」
「重力場の方程式を解くということは、10本の微分方程式を解いて、計量テンソルを求め、時空がどのようにゆがんでいるのかを求めることである。(後略)」
つぎの節では、重力場の方程式を最初に導いたのは、アインシュタインなのか、それとも「現代数学の父とも称される」ヒルベルトなのか、という「先取権争い」を紹介する。
また、ブラックホールを解説する章は、アインシュタイン方程式の「厳密解」の説明からはじまる。(ブラックホールの章がどのような感じかは、書評ページを)
それから、「アインシュタイン方程式を数値シミュレーションする分野」(「数値相対論」と呼ぶそうで、著者はこの分野の専門家)の話がある。これは、「重力波」を解説する章にある。数値相対論の役割のひとつは、「重力波の波形予測」。本書の特色のひとつは、重力波の観測計画、重力波の波形予測など、さまざまな重力波の話題を盛りこんでいるところ。「重力波は物理的な実在か」をめぐるアインシュタインのエピソードもある。(ほかにどのような重力波の話題があるかは書評ページを)。充実した「重力波」の解説が本書の価値を高めている。