分子生物学の手法や研究者の思考に興味がある方におすすめの本
ミトコンドリア・ミステリー
- 著 者:
- 林純一
- 出版社:
- 講談社
書名の「ミステリー」という言葉は、本書の特徴をうまく表している。〝容疑者〟は「ミトコンドリアDNA」。癌や老化の原因がミトコンドリアDNAの突然変異にあるとする説は本当なのか? ミトコンドリアDNAは、有罪なのか冤罪なのか。その判定を下すためにははっきりとした〝証拠〟が必要だ。この〝証拠〟を手にするためには、どのような実験を行えばよいのか。研究者の思考と分子生物学の手法がたっぷりと語られる。それが本書の魅力だ。
著者の素顔が垣間見えるところも読みどころのひとつ。研究者として実験結果を信じて、学界の主流となっている仮説に強い心をもって立ち向かい、またその分野の第一人者と論争を繰り広げる。科学者を志す方にとっても一読の価値がある本ではないだろうか。
本書は、第4章からとくにおもしろくなる。実験の詳細を語られるのが苦手でなければ、おすすめの一冊。
初投稿日:2015年06月27日