「こころ」はいかにして生まれるのか
著 者:
櫻井武
出版社:
講談社
No image
「宇宙のすべてを支配する数式」をパパに習ってみた
著 者:
橋本幸士
出版社:
講談社
No image
免疫の意味論
著 者:
多田富雄
出版社:
青土社
No image
ブラックホールをのぞいてみたら
著 者:
大須賀健
出版社:
KADOKAWA
No image
これが物理学だ!
著 者:
ウォルター・ルーウィン
出版社:
文藝春秋
No image
皮膚感覚と人間のこころ
著 者:
傳田光洋
出版社:
新潮社
No image

マイケル・S.ガザニガの本、どれを読む?

「マイケル・S.ガザニガの本、どれを読む?」メイン画像

脳とこころの関係を、人間とは何かを、科学的な見地から論じる

マイケル・S.ガザニガ(Michael S.Gazzaniga)は、認知神経科学の世界的権威で、分離脳研究でよく知られている。

難治性のてんかん治療のために、左右の大脳半球をつなぐ脳梁を切断する手術が行われることがあり、脳梁が切断された状態の脳は、分離脳と呼ばれている。

この分離脳患者についての研究を紹介しながら、脳の「モジュール説」と、左半球にある「インタープリター・モジュール」の働きを論じるのが、ガザニガの本の特徴のひとつ。

またガザニガは、2001年から9年間、大統領生命倫理評議会のメンバーを務めており、科学技術の進歩にともない生じてきた生命倫理の問題についても論じている。

著書でとりあげられる話題は多彩だが、たびたび取り上げられているトピックが「信念」だ。信念はどのように形成されるのか。脳とこころの関係に興味をもつ多くの人々に読まれている。

ガザニガは、人間を進化の産物と捉えたうえで、「私たち人間は特別だ」(『人間らしさとはなにか?』)という。ひとことでまとめれば、「人間とは何か」を科学的な見地から論じている著者といえるだろうか。

マイケル・S.ガザニガの書籍

本記事投稿時点(2015年6月5日)で、マイケル・S.ガザニガの書籍は6冊(日本語版のみ)

上記のうち、『二つの脳と一つの心』『社会的脳』『マインド・マターズ』の3冊は、本記事投稿時点では入手が困難になっている。

私は、『社会的脳』と『マインド・マターズ』は、ざっと目を通しただけで、熟読していない。あくまで印象ではあるが、簡単に内容を紹介してみたい。

『社会的脳』(1987年)では、分離脳研究とモジュール説が論じられており、「信念の形成」が話題の中心のようだ。ガザニガの本をまだ読んでいない方なら図書館で借りてみるのもよさそう、という印象。

『マインド・マターズ』(1991年)では、痛み、不安、うつ病、強迫観念、薬物、ストレス、愛、記憶、知能、睡眠などが取り上げられているようだ。これらの話題は、ガザニガ以外の本を読んでもいいし、かなり前の入手しにくい本を読まなくてもいいのではないか、という印象。

意識、自由意志と責任、社会的行動などを論じる『<わたし>はどこにあるのか』

二週間の連続講義をまとめたもの。ガザニガの見解をひととおり把握できる。脳の働き、ヒトの脳は他の動物とどう違うか、意識、自由意志、決定論、道徳、責任などの話題がある。もちろん、分離脳研究の話も登場する。原注まで含めて約300ページ。

【単行本】
<わたし>はどこにあるのか
著 者:
マイケル・S.ガザニガ
出版社:
紀伊國屋書店
No image

さまざまな科学者の研究を紹介しながら、人間のユニークさを浮き彫りにする『人間らしさとはなにか?』

「人間らしさ」を考察する広範な知見に触れられるのが魅力だろうか。脳や身体の構造、言語、社会性、道徳、情動、信念、意識、自己、芸術、人工知能、神経インプラントなどについて論じている。著者は「私たち人間は特別だ」と主張する。参考文献と解説を含めて約600ページ。

【単行本】
人間らしさとはなにか?
著 者:
マイケル・S・ガザニガ
出版社:
インターシフト
No image

脳神経科学や遺伝学といった科学技術の進歩がもたらす倫理問題を論じる『脳のなかの倫理』

脳倫理学が直面するさまざまな問題に関して、脳科学の現状と「今後の展望」が冷静に語られている。たとえば、脳の老化にまつわる問題、薬による肉体や知力の能力増強の問題、「自由意志と個人の責任の問題」などが考察されている。

【単行本】
脳のなかの倫理
著 者:
マイケル・S.ガザニガ
出版社:
紀伊國屋書店
No image

分割脳(分離脳)に関する知見が得られる本『二つの脳と一つの心』

J.E.レドゥー(ジョゼフ・ルドゥーとも表記/Joseph E. LeDoux)との共著。1980年に出版された。かなり前の本だが、左右の大脳半球をつなぐ脳梁が切断された「分割脳(分離脳)」について知ることができる。『シナプスが人格をつくる』によると、1970年代に、ガザニガはルドゥーの博士論文の指導教官だったそうだ。

【単行本】
二つの脳と一つの心
著 者:
M.S.ガザニガ/J.E.レドゥー
出版社:
ミネルヴァ書房
No image

マイケル・S.ガザニガの本、どれを読む?

現時点でガザニガのはじめの一冊を選ぶなら(読書を楽しむという点で選ぶなら)、最新作の『<わたし>はどこにあるのか』がよさそう。もし、ガザニガの分離脳研究を詳しく知りたいのであれば(最新知見は得られないが)『二つの脳と一つの心』か『社会的脳』を図書館で借りてみるとよいかもしれない。

【単行本】
<わたし>はどこにあるのか
著 者:
マイケル・S.ガザニガ
出版社:
紀伊國屋書店
No image

マイケル・S.ガザニガ profile

『<わたし>はどこにあるのか』より(一部省略して)引用

1939年生まれ。カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授(心理学)。同大学のSAGE精神研究センター所長。米国認知神経科学研究所の所長を務め、認知神経科学の父とも言われる世界的権威。2001年から大統領生命倫理評議会のメンバーを9年間務める。米国芸術科学アカデミー会員。

初投稿日:2015年06月05日

おすすめ本

著者案内

レビュー「著者案内:橋本幸士」のメイン画像「著者案内:本庶佑」の画像「著者案内オリヴァー・サックス」の画像「デイヴィッド・J・リンデンの本、どれを読む?」メイン画像「デイヴィッド・イーグルマンの本、どれを読む?」メイン画像「井ノ口馨の本、どれを読む?」メイン画像「櫻井武の本、どれを読む?」メイン画像「多田将の本、どれを読む?」メイン画像「リチャード・ドーキンスの本、どれを読む?」メイン画像「福岡伸一の本、どれを読む?」メイン画像「傳田光洋の本、どれを読む?」メイン画像「マイケル・S.ガザニガの本、どれを読む?」メイン画像「アントニオ・R・ダマシオの本、どれを読む?」メイン画像「池谷裕二の本、どれを読む?」メイン画像「リサ・ランドールの本、どれを読む?」メイン画像「ジョゼフ・ルドゥーの本、どれを読む?」メイン画像「V.S.ラマチャンドランの本、どれを読む?」メイン画像「村山斉の本、どれを読む?」メイン画像「大栗博司の本、どれを読む?」メイン画像

テーマ案内