「こころ」はいかにして生まれるのか
著 者:
櫻井武
出版社:
講談社
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「宇宙のすべてを支配する数式」をパパに習ってみた
著 者:
橋本幸士
出版社:
講談社
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免疫の意味論
著 者:
多田富雄
出版社:
青土社
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ブラックホールをのぞいてみたら
著 者:
大須賀健
出版社:
KADOKAWA
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これが物理学だ!
著 者:
ウォルター・ルーウィン
出版社:
文藝春秋
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皮膚感覚と人間のこころ
著 者:
傳田光洋
出版社:
新潮社
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本庶佑の本、どれを読む?

「著者案内:本庶佑」の画像

読者の知識レベルを引き上げる、一般書としては詳細に踏み込んだ解説。2018年のノーベル生理学・医学賞を受賞した研究がわかるのも魅力

本庶佑は、抗体のクラススイッチの仕組みを解明し、クラススイッチが起こる際に働く酵素AID(活性化誘導シチジンデアミナーゼ)を発見した。AIDが、(抗原に対する抗体の結合力を高めるしくみである)体細胞突然変異に必須であることも明らかにしている。

また、「免疫反応のブレーキ役」PD-1を発見し、PD-1阻害によるがん免疫治療を研究・開発している。この研究成果、「免疫抑制の阻害によるがん治療法の発見」によって、2018年のノーベル生理学・医学賞を受賞。

著書を読むことによって、上述した研究を中心に、免疫学など生命科学の多彩な知識を得ることができる。メンデルの遺伝の法則とダーウィンの進化論を重要視しており、とくにゲノムに関する知見が紹介されている。進化の視点からの解説も興味をそそる。

ほかに、「幸福感」についての論考も収められている。

一般書としては詳細に踏み込んで解説しているので、入門書的ではなく、知識をより深めたい方が手にするタイプの本といえる。

本庶佑の書籍

本記事執筆時点(2024年7月時点)で、本庶佑のポピュラーサイエンスの本は、以下のとおり。ただし、現時点で重版・増刷されていない(「品切れ」等)書籍は除いた。(監修、著者多数、寄稿など、著書とは言えないものも除外。)

また、電子書籍版のみで刊行された『PD-1抗体でがんは治るーー新薬ニボルマブの誕生』(岩波書店、2016年)も除外した。この電子書籍の内容は、『がん免疫療法とは何か』に収録されている。

「対談」に興味があれば、現時点では「品切れ」なので入手しにくいが、以下の二冊を手にとるのもよいかも。

  • 『いのちとは何か 幸福・ゲノム・病』(岩波書店、2009年)
    「第Ⅱ部」に、物理学者の米沢富美子との対談を収めている。この30ページほどの対談では、生命科学と物理学という異なる分野の視点から、生命にまつわる議論が行われている。(なお本書の大半を占める「第Ⅰ部」は、『がん免疫療法とは何か』に収録されている。)
  • 『生命の未来を語る』(岩波書店、2003年/中村桂子との共著)
    生命、健康、医療、食をテーマに中村桂子と対談している。

本庶佑の研究の歩みを見渡せる。ノーベル生理学・医学賞受賞記念講演後にノーベル財団に提出した原稿を収録している『幸福感に関する生物学的随想』

ノーベル財団に提出した「Biography」、「Serendipities of Acquired Immunity」(英文)と、それを翻訳した「ひょうたんから駒を生んだ、私の幸せな人生」、「獲得免疫の思いがけない幸運」、そして書名にもなっている「幸福感に関する生物学的随想」(国際高等研究所の「比較幸福学」研究班に所属していた時の論文)、「免疫の力でがんを治せる時代」(2019年の「講書始の儀におけるご進講」)が収められている。

【祥伝社新書】
幸福感に関する生物学的随想
著 者:
本庶佑
出版社:
祥伝社
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「PD-1抗体によるがん免疫療法」など、免疫を中心に生命科学や医療について幅広く論じる『がん免疫療法とは何か』

第1章では、免疫について概観。第2章では、がん免疫療法の基本的な考え方とその歩みから、著者らによるPD-1の発見、PD-1抗体治療の研究・開発・今後の課題までを論じる。第3章では、ゲノムや進化など生命科学の知見を紹介しながら、生命について考察している。第4章では、「生命科学の膨大な要素の複雑性・多様性、それに加わる階層性」について述べ、生命医科学研究への支援のあり方や科学ジャーナリズムについて提言する。第5章では、日本の医療について述べる。

【岩波新書(新赤版)】
がん免疫療法とは何か
著 者:
本庶佑
出版社:
岩波書店
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本庶佑の2つの講演と、川勝平太(当時、静岡県知事)との対談を収録している『生命科学の未来』

本書は、「ノーベル生理学・医学賞受賞にあたって」(序)、本庶佑による2016年の第32回京都賞記念講演および2007年の第11回盛和スカラーズソサエティ総会講演、2014年の川勝平太(当時、静岡県知事)との対談を収録している。最後に、川勝平太による「対談へのあとがき」がある。本庶佑の研究の歩みが垣間見える一冊。

【単行本】
生命科学の未来
著 者:
本庶佑
出版社:
藤原書店
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ゲノム工学技術の進歩によって明らかにされてきた生命科学の知見を解説し、進化の観点に立ちつつ生命観を描き出す『ゲノムが語る生命像』

メンデルの法則とダーウィンの進化論から説き起こし、「ゲノム工学技術の基礎となっている分子細胞遺伝学の基礎知識」と「ゲノム工学の技術」を解説。その技術導入によって明らかにされてきた生命科学の知見を紹介し、進化の観点に立ちつつ生命観を描き出す。さらに、ゲノム工学技術の社会への応用について考察する。(最後に、幸福感や医療などについて述べている。)

【ブルーバックス】
ゲノムが語る生命像
著 者:
本庶佑
出版社:
講談社
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本庶佑の本、どれを読む?

上述した4冊は、つぎのように大別できる。

本庶佑の研究の歩みを知ることができる。
『生命科学の未来』『幸福感に関する生物学的随想』

免疫を中心とした生命科学の多彩な知見を得られる。
『ゲノムが語る生命像』『がん免疫療法とは何か』

『生命科学の未来』と『幸福感に関する生物学的随想』は、どちらも本庶佑の研究の歩みと幸福感について述べられており、内容的にはほぼ同じという印象。違いとしては、『幸福感に関する生物学的随想』のほうが自伝的であり、より詳しく書かれていること、『生命科学の未来』には川勝平太(当時、静岡県知事)との対談が収録されていることが挙げられる。

『ゲノムが語る生命像』と『がん免疫療法とは何か』のそれぞれの特徴は書名からわかるが、前者はとくにゲノムに関する知識が得られ、後者は「PD-1抗体によるがん免疫療法」の知識が得られる(がん免疫療法に特化した本ではない)。どちらも多彩な知見が散りばめられているが、『ゲノムが語る生命像』のほうが焦点を絞った解説になっているという印象がある。〝ゲノムに関する知識を一般レベルで深めたい方におすすめの本〟としても紹介している。

【ブルーバックス】
ゲノムが語る生命像
著 者:
本庶佑
出版社:
講談社
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どの本を選ぶかは好みによるが、ノーベル生理学・医学賞を受賞しているので、本庶佑がどのような研究をしてきたかに興味を持つ方が多いのではないだろうか。そのような方には、『幸福感に関する生物学的随想』をおすすめしたい。ただし、冒頭にも書いたように、この本も一般書としては詳細に踏み込んだ解説がなされている。

【祥伝社新書】
幸福感に関する生物学的随想
著 者:
本庶佑
出版社:
祥伝社
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本庶佑のプロフィール

『幸福感に関する生物学的随想』より(一部省略して)引用

京都大学高等研究院副院長・特別教授、医学博士。1942年、京都市生まれ。京都大学医学部卒業、同大学院医学研究科博士課程終了。大阪大学医学部教授、京都大学医学部教授、同医学部長などを経て現職。専門は分子免疫学。恩賜賞・日本学士院賞、ロベルト・コッホ賞、文化勲章、京都賞など受賞・受章多数。2018年、ノーベル生理学・医学賞を受賞。

初投稿日:2024年07月20日

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