橋本幸士の本、どれを読む?
本文でやさしく、コラムで本格的に。異なるレベルの解説に同時に触れられるのが魅力。理論物理学者の研究の世界も垣間見える
橋本幸士は、理論物理学者、京都大学教授(2024年8月現在)。専門は素粒子論、弦理論、量子重力理論。
ポピュラーサイエンスの本としては、素粒子物理学や超ひも理論(超弦理論)のユニークな解説書や、物理学の読ませるエッセイ集を出版している。
「天才物理学者・浪速阪教授」が高校生の娘やその友人に講義を行う、というシリーズでは、本文でやさしく、コラムで本格的な解説を行っている。またエッセイでも、本文の内容をコラムでさらに深く掘り下げている。コラムを読み飛ばしても本文を読み進められるように配慮されているので、難解な物理にも気楽に接することができる。
このように、異なるレベルの解説に同時に触れられる本を作っているところが、橋本幸士の本の魅力になっている。また著書をとおして、理論物理学者の研究の世界を垣間見ることもできる。
橋本幸士の書籍
2024年8月現在、橋本幸士のポピュラーサイエンスの本は、以下のとおり。(監修、監訳、編集、寄稿、マンガ版の原作など、著書とは言えないものは除外。)
好評の物理学エッセイ集の第二弾『物理学者のすごい日常』
好評を博した『物理学者のすごい思考法』に続く第二弾。前作よりも長めになったエッセイが11篇収められている。(ほかに、前作に載せられなかった短いエッセイを4篇収録)。ユーモアを交えて綴ったり、余韻の残るエッセイに仕上げたり、さまざまなタイプの読ませるエッセイを綴っており、それらを気楽に読み進めていくうちに多彩な物理学の知識に触れられる。
- 著 者:
- 橋本幸士
- 出版社:
- 集英社インターナショナル
理論物理学者の日常を垣間見ることができる、さまざまな物理学の知識や考え方に触れられる、読ませるエッセイ集『物理学者のすごい思考法』
本書は、『小説すばる』の連載エッセイ「異次元の視点」をもとに作られており、理論物理学者の日常や物理学を選んだ経緯など、多彩な読ませるエッセイを収録している。お笑い的なオチのあるエッセイと余韻のあるエッセイがある。
- 著 者:
- 橋本幸士
- 出版社:
- 集英社インターナショナル
「この宇宙のすべてはたった一つの数式で書かれている」ことを伝える『「宇宙のすべてを支配する数式」をパパに習ってみた』
「天才物理学者・浪速阪教授」が、高校生の娘とその友人に、「宇宙のすべてを支配する数式」を1日10分・1週間で教える、という設定。「宇宙のすべてを支配する数式」が示され、この4行の数式を「読んでいく」という内容。数式には、たくさんの謎があることも伝えている。
- 著 者:
- 橋本幸士
- 出版社:
- 講談社
「異次元」にフォーカスして、「超ひも理論(超弦理論)」のエッセンスを一般読者に伝える『超ひも理論をパパに習ってみた』
「天才物理学者・浪速阪教授」が高校生の娘に超ひも理論を教える、という設定で、1日10分・1週間の講義が行われる。物理学者が「異次元」をどのように考えているのかがわかる一冊。「マルダセナの予想」のわかりやすい解説などがある。
- 著 者:
- 橋本幸士
- 出版社:
- 講談社
橋本幸士の本、どれを読む?
私の一推しは、『「宇宙のすべてを支配する数式」をパパに習ってみた』。数式を読む、という解説がユニークでおもしろい。これは、素粒子物理学の一般書を好んで読んでいる方に、ぜひおすすめしたい。
物理学の好きな高校生、とくに理論物理学に興味のある高校生には、『……パパに習ってみた』シリーズの両方をおすすめしたいが、どちらか一冊というなら、『「宇宙のすべてを支配する数式」をパパに習ってみた』をおすすめ。
- 著 者:
- 橋本幸士
- 出版社:
- 講談社
素粒子物理学や超ひも理論(超弦理論)に特に興味をもっているわけではないという方なら、『物理学者のすごい思考法』を手にとるのが良いと思う。上述したとおり、読ませる物理学エッセイ集。第二弾の『物理学者のすごい日常』もおもしろいので好みによるが、どちらか迷った方には、最初に出版された『物理学者のすごい思考法』をおすすめしたい。
- 著 者:
- 橋本幸士
- 出版社:
- 集英社インターナショナル
橋本幸士のprofile
1973年生まれ、大阪育ち。1995年京都大学理学部卒業、2000年京都大学大学院理学研究科修了。理学博士。サンタバーバラ理論物理学研究所、東京大学、理化学研究所などを経て、2012年より、大阪大学大学院理学研究科教授。専門は理論物理学、弦理論。
(引用、終)
2021年4月 京都大学教授。