「こころ」はいかにして生まれるのか
著 者:
櫻井武
出版社:
講談社
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「宇宙のすべてを支配する数式」をパパに習ってみた
著 者:
橋本幸士
出版社:
講談社
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免疫の意味論
著 者:
多田富雄
出版社:
青土社
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ブラックホールをのぞいてみたら
著 者:
大須賀健
出版社:
KADOKAWA
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これが物理学だ!
著 者:
ウォルター・ルーウィン
出版社:
文藝春秋
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皮膚感覚と人間のこころ
著 者:
傳田光洋
出版社:
新潮社
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デイヴィッド・イーグルマンの本、どれを読む?

「デイヴィッド・イーグルマンの本、どれを読む?」メイン画像

現実とは何か。意識は傍観者である。ふだん気づきにくい私たち自身の謎を、豊富な事例を積み重ねて浮き彫りにする第一級の書き手

デイヴィッド・イーグルマン(David Eagleman)は、「スタンフォード大学の神経科学者。《サイエンス》から《ネイチャー》まで種々の専門誌に成果を発表する研究者」(『あなたの脳のはなし』著者紹介/2017年9月)

たとえば、イーグルマンは「共感覚者」(言葉に味がする人、音に色が見える人、など)を研究している。「共感覚のおかげで、人が世界をどう知覚するかは画一的ではないことがよくわかる」という。(『あなたの脳のはなし』)

「時間知覚」の研究も行っている。事故に遭遇したとき、その出来事はスローモーションで起こったと回想する人たちがいる。イーグルマンらは、「恐ろしい状況では、時間の流れは本当に遅くなるのか?」という問題に取り組んだ。(『あなたの脳のはなし』)

「感覚代行」に関するプロジェクトもある。感覚代行とは「触覚を通じての視覚のように、ふつうでない経路で感覚情報を供給することを指す」。イーグルマンらは、聴覚障害者に感覚代行を提供するため、「VEST」(多様な感覚外の変換器)を構築した。まだ初期段階だが、聴覚障害者が「胴体に伝わる振動の動きのパターンで」聴くことができるようなVESTを構築した。(『あなたの脳のはなし』)

著書では、他にも研究内容が紹介されている。イーグルマン自身の研究のみならず、多様な研究事例を盛り込んで、脳の柔軟さと潜在力、無意識の広大さを照らし出しているのが、イーグルマンの本の特徴だ。

私自身の中心は「私の意識」ではない、意識は「傍観者」である。

脳のなかには「大勢がいる」。意識の水面下では、「私の行動」という一つの出力チャネルをめぐり、神経細胞の小集団が争っている。(『意識は傍観者である』)

脳は物語を紡ぎ出す。私たちは、その物語を見ている。現実とは「消すことができないテレビ番組のようなものだ」(『あなたの脳のはなし』)

デイヴィッド・イーグルマンは、ふだん気づきにくい私たち自身の謎を、豊富な事例を積み重ねて浮き彫りにする第一級の書き手だ。

デイヴィッド・イーグルマンの書籍

デイヴィッド・イーグルマンの一般向けの科学本(日本語版)は、2018年5月時点で、下記3冊。(『意識は傍観者である』と、その文庫版『あなたの知らない脳』は一冊とした。また、『脳神経学者の語る40の死後のものがたり』[筑摩書房/2010年]は、NDC 分類「英米文学」なので、除外した)

海外で好評だった「テレビシリーズ」の書籍版『あなたの脳のはなし』

脳の発育から説き起こし、脳の柔軟さを浮き彫りにする。つぎに、視覚系の話題を軸にして「現実とは何か」を論じる。そして、「無意識の脳」に光をあて、「意識は傍観者である」ことを述べる。さらに、人間の社会性を脳回路の観点から見ていく。最後に、脳科学とテクノロジーの発展が私たちに何をもたらすのか、現実的な話とSF小説的な話を記している。

【ハヤカワ文庫NF】
あなたの脳のはなし
著 者:
デイヴィッド・イーグルマン
出版社:
早川書房
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私自身の中心は「私の意識」ではない。この見解を神経科学のさまざまな研究事例を織り交ぜて伝える『意識は傍観者である』(文庫版書名『あなたの知らない脳』)

「私たちがやること、考えること、そして感じることの大半は、私たちの意識の支配下にはない」。「人の内面は脳の機能に左右されるが、脳は独自に仕事を仕切っている。その営みの大部分に意識はアクセス権をもっていない」。この主張を、神経科学のさまざまな研究事例を織り交ぜて伝える。脳のなかには「大勢がいる」、ループする脳の強み、思考のウムヴェルト(思考の環世界)、など、おもしろい話題が満載。

【ハヤカワ文庫NF『あなたの知らない脳——意識は傍観者である』】
あなたの知らない脳
著 者:
デイヴィッド・イーグルマン
出版社:
早川書房
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多種多様な共感覚の事例を網羅的に紹介し、共感覚の神経基盤を考察する『脳のなかの万華鏡』

リチャード・E・サイトウィックとの共著。共感覚者自身の言葉を交えながら、また共感覚をもつ芸術家について述べながら、多種多様な共感覚の事例を網羅的に紹介し、共感覚の神経基盤を考察している。また、共感覚の観点から、メタファーや創造性について論じている。

【単行本】
脳のなかの万華鏡
著 者:
リチャード・E・サイトウィック/デイヴィッド・M・イーグルマン
出版社:
河出書房新社
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デイヴィッド・イーグルマンの本、どれを読む?

はじめの一冊として、『意識は傍観者である』(文庫版『あなたの知らない脳』)をおすすめしたい。この本は、「無意識の脳」に光をあてた、とてもおもしろい読み物。おもしろいだけでなく、自分の言動を振り返るときにも役立つ本だと思う。

もちろん、海外の「テレビシリーズ」の書籍版『あなたの脳のはなし』を選ぶのもありだ。こちらも、おもしろい。この本では、さまざまな角度から脳について語っている。

この二冊を、喩えを用いて比較してみると、『意識は傍観者である』は、たくさんの話題を主題に沿って見事に並べて一本道をつくりあげているようなイメージ、『あなたの脳のはなし』は、広場でつぎつぎに催し物(脳の話)を見せているようなイメージだ。

重複している話題も多いが、読後感はかなり違うと思う(私は違った)。やはり主題を見事に描き出している本には、独特の余韻がある。〝一本道〟を歩き終えたときに見えるのは、無意識の広大さだ。私のなかには「大勢がいる」

ちなみに、『脳のなかの万華鏡』(リチャード・E・サイトウィックとの共著)は、共感覚を〝網羅的に〟知りたい方におすすめの本だ。

三冊ともおもしろいが、私の一推しは、『意識は傍観者である』。その文庫版『あなたの知らない脳』は手にとっていないが、章題が一緒なので、たぶん内容もほぼ同じだと思う。

【ハヤカワ文庫NF『あなたの知らない脳——意識は傍観者である』】
あなたの知らない脳
著 者:
デイヴィッド・イーグルマン
出版社:
早川書房
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デイヴィッド・イーグルマン profile

アメリカ、ニューメキシコ州生まれ。テキサスのライス大学で英文学を修めたのちにベイラー医科大学で神経科学のPh.D.を取得。(『意識は傍観者である』単行本より部分的に引用)

2018年6月現在、スタンフォード大学の神経科学者。(参考:『あなたの脳のはなし』、eagleman.com)

初投稿日:2018年06月22日最終加筆:2022年12月23日

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