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宇宙はなぜ美しいのかーー究極の「宇宙の法則」を目指して

書籍情報

【幻冬舎新書・カラー新書】
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著 者:
村山斉
出版社:
幻冬舎
出版年:
2021年11月

「対称性」にまつわる解説を軸に、素粒子論・宇宙論の話題を広く取り上げる

素粒子論・宇宙論の専門家である著者・村山斉は、その専門分野をわかりやすく伝える一般向けの講義も行っており、本書は、朝日カルチャーセンターでの講義をもとにつくられたもの。

大まかな構成はつぎのようになっている。第1章では、豊富な天体写真を交えて、宇宙に関するめぼしい話題を見ていく。第2章で、「対称性」を基本から解説する。第3章では、さまざまな理論と「理論の統一」について述べる。この章にも対称性の説明が登場。第4章では、対称性に関する2つの重要なポイントを論じる。第5章では、インフレーション理論や初期の宇宙にまつわる話題などを取り上げる。

また本書の特徴として、カラー写真を多数掲載していること、オンラインコンテンツをすぐに見られるようにQRコードを入れていることが挙げられる。

対称性を基本からわかりやすく解説

まず、富士山、平等院鳳凰堂、エッフェル塔から撮影したシャイヨー宮、ベルサイユ宮殿の写真を見ながら、左右対称について述べていく。そして、「線対称」をつぎのように説明する。

「いま見てきた「左右対称」は、「線対称」のひとつで、対称性の基本です。どこかに1本線を引いて、その線を折り目に一方を折り返すともう一方に重なることを線対称といいます。線対称には「左右対称」だけでなく「上下対称」もあります。」

さらに、対称性の数え方の説明がつぎのように続く。

「平等院鳳凰堂もベルサイユ宮殿も、左右ではなく「上下」をひっくり返したら、まったく別の形になってしまいます。この場合、対称性は2つしかありません。本来の姿でひとつ、左右を入れ替えたものでもうひとつ。対称性は、そのように数えます。どちらもあまり対称性は高くありません。」

ここから、「もっと対称性の高いもの」を見ていく。東京タワー、パリの凱旋門を取り囲む道路、アメリカの国会議事堂の天井の写真があり、これらの対称性の数を説明する。そのあとで、「円と球の対称性の数え方」を解説していく。

このような流れで、対称性がどのようなものかを述べ、そして宇宙空間に対称性があるかどうかを論じていく。また、4次元、5次元、6次元空間といった4次元以上の空間の対称性の話題も登場する。

「自発的対称性の破れ」を解説

第4章では、対称性に関する2つの重要なポイントを解説。

まず、物理学にはいろいろな「保存則」があるが、「どんな対称性から何の保存則が導かれるか」を説明する。

つぎに、「対称性の破れ」について見ていく。洗濯物を干すときの例えなどを用いて解説し、2008年にノーベル物理学賞を受賞した南部陽一郎の「自発的対称性の破れ」という概念を一般向けに噛み砕いて伝えている。

南部陽一郎はこんなふうに説明したそうだ。「系は対称的であっても、最低エネルギー状態は対称的でないこと、その場合、最低エネルギー状態が複数あり、縮退する」

この難解なものを多彩な事例と図を交えて丁寧に解説している。

感想・ひとこと

村山斉の本を読んできた方や、このテーマの本をいくつか読んできた方であれば、知っている話題が多いのではないかと思う。それでも、「対称性」について丁寧に解説しているので、おすすめできる。

初投稿日:2024年01月20日

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