宇宙を創るダークマターーー「宇宙カクテル」のレシピ
書籍情報
- 著 者:
- キャサリン・フリース
- 訳 者:
- 水谷淳
- 出版社:
- 日本評論社
- 出版年:
- 2015年6月
著者は「理論面からダークマター探しを牽引する第一人者」(著者紹介より)。本書の特色は、ダークマターの検出実験について詳細に解説しているところ
宇宙の26パーセント(*)を占めるという、謎の重力源「ダークマター」が本書の主役。
(*)この値は「2013年3月に発表されたプランク衛星による結果」
「(前略)ダークマターが銀河や銀河団の質量の大部分を占めることが、いまでは分かっている。「ダーク」と呼ばれているのは、光を発せず望遠鏡で見ることができないからだ。その正体は謎だが、存在していることは間違いない(後略)」といい、そして、「その素性がいまにも明らかになろうとしているのだ」という。
著者はダークマターの専門家。こう述べている。「私たちが二五年前におこなった提案と計算が、世界規模で盛んなダークマター探しを促し、最近では思わせぶりな検出の兆候を生み出している」と。
この「思わせぶりな検出」とはどのようなものか、第八章「検出したという主張 本物なのか?」で詳細に説明している。ここが本書の読みどころ。検出装置についての詳しい説明を交えながら述べている。
そのまえの第七章では、「ダークマター探しの三つの方法」を紹介している。そのうちの一つは、ダークマターをつくりだすというもの。「LHCでの陽子衝突によってダークマター粒子が生成するかもしれず、それはさまざまな方法で特定できるはずだ」という。
CERNのLHC(大型ハドロンコライダー)といえば、ヒッグスボソンの発見が有名だ。これにまつわる解説が、第六章。
第五章では、ダークマター候補を紹介する。現在では否定されているものも含めて解説。「ほとんどの物理学者が見るところ、ダークマターの最有力候補は「弱い相互作用をする重い粒子」(WIMP)である」という。
第二章から第四章にはつぎのような話題がある。ダークマターの存在がどのようにして浮かび上がってきたのか、「宇宙の幾何構造」、「宇宙マイクロ波背景放射(CMB)」、「ビッグバン元素合成」など。
著者はこう述べる。「CMBでも元素合成の研究でも、宇宙の全エネルギー密度と通常物質の量とは食い違っており、そこから必然的に、宇宙の大部分は何か新しい風変わりな代物でできているという結論が導かれるのだ」と。
第一章は、著者のエピソードを披露することからはじめて、ダークマターについて概説する。第九章(最終章)は、「ダークエネルギーと宇宙の運命」について。
ひとこと
ダークマター(暗黒物質)についての入門書ではなく、より興味を深めるための一冊。