時空のからくりーー時間と空間はなぜ「一体不可分」なのか
書籍情報
- 著 者:
- 山田克哉
- 出版社:
- 講談社
- 出版年:
- 2017年6月
アインシュタインの相対性理論を一般レベルで詳しく解説
相対性理論には、「特殊相対性理論」と「一般相対性理論」がある。アインシュタインは、特殊相対性理論を構築し、それを一般相対性理論へと拡張した。
特殊相対性理論は、「加速(減速)なしの等速直線運動をする慣性座標系にしかあてはまらない理論」。「加速や減速(曲線上の運動も含む)を含めたもっと一般的な理論に拡張したもの」が一般相対性理論だという。
本書では、アインシュタインがどのようにして理論を拡張させたのかが私たち一般にもイメージできるように詳しく丁寧に解説している。
テンソルを紹介する
「計量テンソル」や「リッチテンソル」を一般向けのレベルで紹介している。
ポピュラーサイエンスの本で一般相対性理論が紹介されるとき、それなりの紙面を割いて「テンソル」が説明されることはあまりないので、どのようなものか〝垣間見たい〟という人にとっては手にとる価値のある本と言えるかもしれない。
著者は、計量テンソルの説明の後で、「ここまでくれば、曲がった時空を論ずるのに計量テンソルがいかに重要であるかを、いくらか垣間見ることができたのではないでしょうか。」と記している。
テンソルについては、「八っつあんと熊さんの掛け合い物理学」という形式でも説明される。本書後半では、この「掛け合い」形式の解説を交えている。例えば、「テンソルって何だ?」では、八っつあんがつぎのように問いかける。
「ところで熊さん、今まで〝テンソル〟という言葉がさんざん使われてきたが、いったいテンソルって何なんだい? ここまでの説明じゃあ、オレにはさっぱり理解できねえ。」
八っつあんは読者の代弁者的な位置づけ。熊さんが解説役で、ベクトルから始めてテンソルを説明する。なぜテンソルを紹介するのかも語っている。
また本書では、ひとつの章を割いて「測地線とは何か」についても解説している。
原始重力波の観測にまつわる話題
宇宙誕生直後に起きたという急膨張(インフレーション)から、ビッグバン、「宇宙の晴れ上がり」までを概説し、インフレーション期に発生したという原始重力波の観測にまつわる話題を紹介している。原始重力波は、宇宙背景放射(ビッグバンの「残光」)を偏光させるという。この偏光を検出する試みがなされている。本書では、「Eモード偏光」と「Bモード偏光」について解説している。
感想・ひとこと
読者に相対性理論を一般レベルで本気で教えてくれていることが伝わってくる。詳しく丁寧な解説がなされているので、そのぶん読み進めるのに時間がかかるかもしれない。気楽に読むというより、集中して読む学びの本という印象をもった。