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光と重力ーーニュートンとアインシュタインが考えたこと 一般相対性理論とは何か

書籍情報

【ブルーバックス】
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著 者:
小山慶太
出版社:
講談社
出版年:
2015年8月

光と重力をキーワードに、ニュートンとアインシュタインの研究成果を紹介する

ニュートンは、ペスト流行によってウールスソープの生家で2年近くを過ごし、その間に主要な業績の基礎を固めたという。1665年から66年にかけてのことで、「最高の創造期」にいた。

アインシュタインは1905年に、光量子仮説、ブラウン運動の理論、特殊相対性理論の論文を次々と発表した。この年は「奇跡の年」と呼ばれている。

本書では、二人の天才の共通点に光を当て、彼ら自身の言葉や人物像が垣間見える多彩なエピソードを織り込みながら、その研究成果を紹介している。

まず第1章では、二人の業績や歩みを概観する。第2章と第3章は、以下のとおり。第4章では、ニュートンが地球の形は扁平と示したこと、「地球測量の大冒険」について、ニュートンとハレーのエピソード、ハレー彗星の話題などを取り上げ、さらに力学の発展などニュートン力学以降の物理学の発展を見ていく。第5章では、アインシュタインの「ブラウン運動の理論」、「ボース – アインシュタイン凝縮」、「誘導放射の理論」などを解説している。

ニュートンとアインシュタインの「光」にまつわる研究

ケンブリッジのトリニティ・カレッジ礼拝堂に飾られているニュートンの立像は、ガラスのプリズムを手にしている。なぜ、『プリンキピア』の本でもリンゴでもなく、プリズムなのか。

(公表されたものとしては)ニュートンの最初の論文となる「光と色についての新理論」では、光学が扱われている。その書き出しの記述を紹介してから、著者はつぎのように記している。

「……つまり、ニュートンはプリズムを使った実験を行って旧説を覆し、新しい光の理論を打ち立てようとしていたのである。……プリズムを手にしている所以はそこにある。」

そして旧説とはどのようなものかを述べ、それを打ち破ったニュートンの光学実験について解説していく。

ニュートンは、光の本性についてどう考えていたのか。光の本性は、「粒子」なのか、「波」なのか。その論争について見ていく。ニュートンは「粒子」として捉えていたが、「多彩な分野でその才能を発揮した希代の実験家」フックは、「波動」と考えた。また、オランダのホイヘンスは「光の波動説」を提唱した。

この論争は、「ヤングの光の干渉実験」やフーコーの実験によって光の波動説が確立され、決着がついたかに見えた。ところが、「それから半世紀後、この問題はアインシュタインによって再び、もう一波瀾を迎えることになる。」

このあと、「マクスウェル方程式と電磁波」の話題となり、「光は電磁波に他ならない」という結論にいたる過程が簡潔に述べられる。そして、マクスウェル方程式から導き出された電磁波の速度(光速)に関する、当時の物理学者たちが抱えた問題について論じる。

著者は、こんなふうに説明している。「もう一度おさらいをしておくと、マクスウェル方程式から電磁場の波動方程式が導き出され、電磁場が波となり、真空中を光速(秒速約三〇万キロメートル)で伝播することが示された。……」。

こう続ける。「このとき、光速に注目すると、果たしてそれは何を基準にした場合の値なのかという問題が生じた(一般に、速度は基準の取り方によっていかようにも変化する、相対的な物理量だからである。ニュートン力学の速度の合成則は、まさにそれを示している)。」

このように述べてから、この問題が当時どのように考えられ、どのような実験が行われたかを解説する。

アインシュタインは、「光速度不変の原理」を前提に特殊相対性理論を構築する。特殊相対性理論の解説のところでは、有名な式「E=mc2」も登場し、原子爆弾の話題へと展開される。

特殊相対性理論を発表した1905年、アインシュタインは、「光の発生と変換に関する発見法的視点について」という論文(「光の粒子性を示す光量子仮説の論文」)も発表している。著者は、この論文タイトルについて注釈を加えたあと、つぎのように記す。

「……アインシュタインは光の姿を波(マクスウェル方程式から導き出された電磁波)から粒子に〝変身〟させ、それによって、熱放射や光電効果の実験結果の説明を試みたのである。」

いったん決着がついたかに見えた光の本性(粒子か波か)の論争は、こうして「もう一波瀾」巻き起こる。ただし、それは「ニュートンの粒子説をそのまま復活させたわけではない」という。アインシュタインは、「光の本性の新しい捉え方」を示し、「粒子と波の二重性」を基盤とする量子力学構築への道を開いた。

光量子仮説に関する解説のあと、アインシュタインが量子力学の「確率的解釈」を批判したことを述べる。

これが、第2章「光ーー天才を捉えしもの」の大まかな流れ。

ニュートン力学と一般相対性理論に関する話題

第3章「重力ーー統一への指向」では、ドイツの哲学者カントが用いた「コペルニクス的転回」という言葉にまつわる話を導入に、コペルニクス、ガリレオ、デカルト、ティコ・ブラーエ、ケプラーの流れをざっと辿り、ニュートン力学について『プリンキピア』の記述を交えながら見ていく。そのあとで、アインシュタインが一般相対性理論を構築していく歩みと、その理論から導き出される予測に関する話題を紹介する。

感想・ひとこと

難しい物理の話も出てくるが、アインシュタインの凄さがよくわかる。

初投稿日:2024年12月23日

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