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出版社:
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意識と自己
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超ひも理論をパパに習ってみたーー天才物理学者・浪速阪教授の70分講義

書籍情報

【単行本】
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著 者:
橋本幸士
出版社:
講談社
出版年:
2015年2月

「異次元」にフォーカスして、「超ひも理論(超弦理論)」のエッセンスを一般読者に伝える

著者の橋本幸士は、超ひも理論(超弦理論)の専門家。本書では、「天才物理学者・浪速阪教授」が高校生の娘に超ひも理論を教える、という設定で、1日10分・1週間の講義が行われる。

その第1講義~第7講義に、導入的な「予習」と「第0講義」、理論物理学者の世界が垣間見える「休憩」、結びの「復習(約1ページ)」が加わり、全11章という構成。「おわりに」も含めて約160ページ。

パパと娘の会話形式で展開される本文のほかに、各「講義」の終わりにはコラムがある。ここでは、各講義の内容に従って「少し発展的な話題を含んだ解説」がなされる。このコラムは、本文に比べて難易度が上がっている。

また、各章(「復習」を除く)の終わりには「浪速阪の日記」があり、理論物理学者の日々の思考が垣間見える。上述した「休憩」の章もそうだが、本書では、理論物理学者の世界を垣間見えるようにするという配慮がなされている。

物理学者は、「異次元」をどのように考えているのか

異次元があるとしたら、なぜ異次元は見えないのか。「異次元」の有無はどうやって調べられるのか。

まず、2次元の世界に住む人の例えが用いられる。

2次元の世界に住む人には、3次元は(異次元になるので)想像できない。本書では、2次元世界は「紙の上の世界」として図示される。その紙の上には、2次元の人が「円」として描かれてい る。2次元世界に、3次元の住人(「球」)がやって来たら、2次元の人にはどう見えるのか。(「球」が上からやって来て、「紙の上の世界」を通り抜けて、下に消えていく図が示されている)。このとき、2次元の人には、球の「切り口」しか見えない。

娘がこう言う。「じゃあ、私の3次元の場合も、異次元がもしあったとして、その異次元にも広がるモノがあったとすると、その切り口しか見えないっていうこと?」

パパが関西弁でこう答える。「当たり! しかも、その異次元にも広がるモノは、消えてしまうように見えたりするわけ。物理学には有名な、エネルギー保存の法則、っていうのがあるんやけど、もしモノが消えてしまったら、エネルギーが保存せんことになって、そりゃ大変なことになってまう。そやから、異次元があるかないかは、エネルギーが保存しているかどうかをチェックすれば調べられるんや」

それを調べている実験がある。候補の現象は見つかっているようだが、まだエネルギーが消えたという結論にはなっていないという。

そこから、異次元はなぜ見えないのか、という話が展開される。二つの可能性があると述べて、その説明がなされていく。本書には「今日のパパの話のまとめ」があるのだが、そこには、こう記されている。「異次元が見えてないのは、進めないか、丸まっているか。」

ほかに、次元をどう数えるか、という話もある。「じつは、次元ちゅうのは、力の伝わり具合でわかるんよ」と言って、その解説は始まる。

「マルダセナの予想」を解説

マルダセナの予想について、本書ではわかりやすく、つぎのように説明している。

「マルダセナ予想ーー違う空間次元の理論が同じという予想。3次元空間のグルーオンの力の話と、曲がった4次元空間の重力が同じーー」

こう述べてもいる。「マルダセナの発見したことを一言で簡単に言うと、『3次元空間に住んでいるグルーオンの力の物理は、ある曲がった高次元空間の重力の物理とおんなじ』ちゅうことになる。……略……」

これを読んで、わかりやすいと思われない方もいるかもしれないが、マルダセナ予想を「正確」に述べた記述もあるので、その「呪文」を読めば、わかりやすく説明されていると思うはず。

本書では、「開いたひも」と「閉じたひも」の説明から始めて、「マルダセナの予想」を私たち一般がイメージできるように解説している。

感想・ひとこと

高校生の娘に教えるという設定とその内容(とくにコラムの内容)から考えると、主な読者として想定しているのは〝物理学が得意な高校生〟だろうか。大学で理論物理学を学びたいと思っているような物理学が好きな高校生。そういう方に向けて、超弦理論のおもしろさや理論物理学の研究の雰囲気を伝えようとしているのではないか。そんな印象を受けた。

初投稿日:2024年05月24日

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