サックス博士の片頭痛大全
書籍情報
- 著 者:
- オリヴァー・サックス
- 訳 者:
- 春日井晶子/大庭紀雄
- 出版社:
- 早川書房
- 出版年:
- 2000年11月
オリヴァー・サックスの最初の著書。片頭痛を幅広く詳細に論じた大著
『MIGRAINE』(1992年版)の邦訳。『MIGRAINE』の初版は1970年に出版されており、これがオリヴァー・サックスの最初の著書。ちなみに、単行本(書名は『偏頭痛百科』、晶文社)は、『MIGRAINE』(1985年版)の邦訳。
まず片頭痛研究の歴史をたどり、第一部・第二部で片頭痛の様々なタイプと発生要因について多数の症例を交えて概観する。第三部で片頭痛の生理学的基礎について考察し、さらに行動学的および心理学的側面から見ていく。第四部で治療について述べ、第五部で片頭痛による幻覚を取り上げる。573ページの大著。
片頭痛の症状は多種多様
片頭痛という言葉からは、「頭の片側に生じる痛み」という症状がイメージされる。しかし、頭痛のない片頭痛もあるという。著者は、「頭痛が片頭痛の唯一の症状ではなく、片頭痛発作に必発の症状でもない」と述べている。
本書では、片頭痛の多種多様な症状とその発生要因を詳細に論じ、その記述を通して「心と体が完全に一体であること」を浮き彫りにする。
片頭痛は人間にしか起こらないのか?
この問いへの答えは、「イエスでもありノーでもある」というもの。「片頭痛や類縁反応の生物学的な発生起原やはたらき」について、動物の反応に照らしながら考察している。
感想・ひとこと
オリヴァー・サックスの著書なので手にとった。片頭痛の情報を求めているわけではなかったが、興味をもって読むことができた。それは、片頭痛は「心と体が完全に一体であること」を示していると著者サックスは述べているが、その視点で読み進めることができたからだ。
とはいっても、やはり本書は片頭痛の情報を求めている人のためのものだろう。そうでない読者の場合、573ページはややつらいかもしれない。私は、もうすこし絞ってほしかったが、その一方で、このような個々の症例を見つめた記述こそがサックスの本のユニークさだとも思った。
最も興味をそそられたのは、片頭痛のメカニズムを考察するところ。上述したとおり、片頭痛はその言葉におさまらないほど多種多様なのだが、それらを包括する説明を試みており、ここが私にとっての読みどころだった。
2023年4月時点では入手困難になっている。