ウイルス、パンデミック、そして免疫
書籍情報
- 著 者:
- アラップ・K・チャクラボルティー/アンドレイ・S・ショウ
- 監 訳:
- 山本太郎
- 訳 者:
- 伊藤史織
- 出版社:
- ニュートンプレス
- 出版年:
- 2022年3月
感染症にどのように立ち向かってきたのか、古代から現代までの歩みを描く
古代の病気に対する考え方から説き起こし、天然痘を根絶するまでの歴史を辿る。つぎに、ロベルト・コッホとルイ・パスツールのそれぞれの功績を簡潔に紹介する。そして、ウイルスはどのようにして現れ、パンデミックを引き起こすのかを見ていく。私たちの免疫機能はウイルスや微生物とどのように戦うのか、免疫学の発展の歴史を交えながら解説。その後で、「感染症の数理モデル」の特性の説明と感染症の拡大を抑えるための対策について論じる。最後に、「抗ウイルス療法」と「ワクチン」を取り上げる。これが、本書の大まかな流れ。
ウイルスはどのようにして現れ、パンデミックを引き起こすのか
「分子生物学のセントラルドグマ」の説明からはじめ、ウイルスの種類や複製の仕組みなど、ウイルスの基本的なことを見ていく。
そして、ウイルスはどのようにして現れ、パンデミックを引き起こすのかについて、新型コロナウイルス、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルスの例をあげて解説していく。ここでは、RNAウイルスにおける「遺伝子の組み換え」や「遺伝子の再集合」について知ることができる。
抗ウイルス療法とワクチンの仕組みの概要がわかる
抗ウイルス療法について、こう述べている。「細胞への侵入、複製、新しいウイルスの組み立て、細胞外への放出というウイルスのライフサイクルを、どこかのステップで、あるいは複数のステップにおいて阻止しようと試みるのが抗ウイルス療法である」。
この、ウイルスの細胞への侵入、複製、組み立て、放出を阻止する、それぞれの試みについて説明している。
また、ワクチンの仕組みと開発方法の概要を紹介している。「弱毒化生ワクチン」「不活化ワクチン」「サブユニットワクチン」「DNAワクチン、RNAワクチン」の違いなどがわかる。
感想・ひとこと
原書は2020年9月にアメリカで出版されたものなので、新型コロナウイルス感染症については、その時点の情報になっている。
免疫についての興味から本書を手にしたが、その部分ではなく、抗ウイルス療法とワクチンの仕組みの解説のところに興味を引かれた。本書の魅力は、古代から現代まで、感染症に対する人類の取り組みを見渡せるところではないだろうか。