数学入門
書籍情報
【岩波新書(上)】
- 著 者:
- 遠山啓
- 出版社:
- 岩波書店
- 出版年:
- 1959年11月
【(下)】
- 著 者:
- 遠山啓
- 出版社:
- 岩波書店
- 出版年:
- 1960年10月
本書の上巻が刊行されたのが、1959年。何度も増刷されてきた名著
この本は、書名「数学入門」という言葉どおり、数学を学ぶ本なのだが、読み物としてもおもしろい。たとえば、「Ⅵ 円の世界」という章は、こんなふうに始まる。
「中世紀最大の詩人ダンテが当時としては相当な数学者であったことはあまり知られていないようである。彼の最大の作品『神曲』は地獄、煉獄、天国にわかれているが、地獄が34曲、煉獄と天国がそれぞれ33曲ずつ、合計100曲になっている。これも数字をうまく100に合わせようとしたのであろう。(中略)。数だけではなく図形もまたダンテの大好物だったらしい。地獄にも天国にも円がふんだんに現われてくる。地獄の中の牢屋も円であるし、ベアトリチェの頭をつつんでいる光の輪も円である。(後略)」
このようなエピソードを織り込みながら解説している。
数学の学びについて。学ぶ範囲は、「微分方程式」まで。著者はこう述べている。「たしかに微分方程式までの知識が日本人の常識になったら、それはすばらしいことであろうと思う。そこまでを一応の目標としてこの入門書を書いてみたのである」
そしてこう続けている。「まずはじめに読者にお願いしたいのは、数学を勉強するには何か特別な構えが必要だという先入見をすててもらいたい、ということである」と。
数学を学ぶうえで必要なのは、「誰もが持ち合わせている良識」と「多少の根気」だそうだ。
(引用の際に「,」は「、」に、「.」は「。」にした)
ひとこと
たくさんの人に読まれてきた本なので、数学を学びたい(学び直したい)大人であれば、手にとってみたくなる一冊ではないだろうか。
初投稿日:2015年11月10日