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櫻井武
出版社:
講談社
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「宇宙のすべてを支配する数式」をパパに習ってみた
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橋本幸士
出版社:
講談社
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免疫の意味論
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これが物理学だ!
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皮膚感覚と人間のこころ
著 者:
傳田光洋
出版社:
新潮社
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しっぽ学

書籍情報

【光文社新書】
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著 者:
東島沙弥佳
出版社:
光文社
出版年:
2024年8月

「研究のライブ感」が伝わることを重視して自身の研究の歩みを綴り、多様な角度から「しっぽ」を解説

「文学部、理学研究科、医学研究科と毛色の異なる所属を経てきた」著者は、文理両方からのアプローチでしっぽを研究している。そのため本書には、しっぽに関する遺伝子の話題もあれば、『日本書紀』と向き合った研究の話題もある。人類学、形態学、解剖学、発生生物学といった多様な視点からの解説が盛り込まれているところが本書の特徴だろう。

著者のいう「しっぽ」は、脊椎動物のしっぽであり、「脊椎動物のどういった器官をしっぽと呼ぶのか」というところから説明している。

しっぽと呼ぶためには、「位置」「中身」「かたち」に着目して、つぎのような条件を満たしている必要があるという。「肛門あるいは総排泄孔より後方に存在すること、内部に体幹と同じように椎骨や筋肉、神経、血管を備えていること、そして体の外に突出していること」。このような、しっぽの条件を述べてから、しっぽを構成する骨(仙骨、尾椎)や筋肉について見ていく。ここでは、テールスープの話などを織り込み、学問的な解説だけが続かないように配慮している。

気楽に読み進められるような配慮は、本書全体にわたってなされている。

大学院時代のケニアでの発掘調査のエピソードを披露するなど、「研究のライブ感」が伝わることを重視しながら、多様な角度から「しっぽ」を解説している一冊。

「ヒト上科におけるしっぽ喪失の歴史を考える上で重要な化石」を紹介し、「しっぽ研究の第一歩」を綴る

monkey(モンキー)とape(エイプ)の違いから説明し、「ヒト上科(類人猿)にはおしなべてしっぽがない」ことを述べ、ヒト上科へと至る進化の道のりを大雑把に見てから、「しっぽ喪失の歴史を考える上で重要な化石」を紹介している。

一つは、オナガザル上科とヒト上科の共通祖先と考えられているというエジプトピテクス(約3300万年前の化石)。遠位尾椎が1点出土しており、それは「この種が間違いなくある程度の長さのしっぽを持っていたことを意味する」。

もう一つは、ヒト上科の共通祖先と考えられているという霊長類の化石。特筆すべきものとして、エケンボ(約1800万年前)とナチョラピテクス(約1550万年前)を挙げている。「これらには仙骨の一部が残存しており、その形態からすでにしっぽを完全に喪失していたことが判明している」。

しっぽがある段階とない段階の化石があるため、この間のどこかでしっぽを失くしたのは確かだ。「しかし、この時期に相当する化石がまだ一切見つかっておらず、ヒトはいつ・どのように・なぜしっぽを失くしたのかは全く分からない」という。

とはいえ、今後も化石が見つからないと決まったわけではない。大学院時代の著者は、いつか化石が見つかったときのことを考えて、「しっぽ研究の第一歩」を踏み出した。その研究について、臨場感あふれる筆致で綴っている。

形態学的な研究から発生生物学の分野へ

著者は「形態学的な研究を重ねて博士号をとったものの」、発生生物学という別分野の研究員になる。

ヒトの発生過程で、しっぽは一旦は作られ、その後に消える。「ヒトのしっぽが発生過程でどのようになくなるのかを知りたい」。著者は、ヒト胚標本を用いて体節に注目して研究を進める。また、「Human tail」という先天異常に関する研究も行っている。

本書では、著者の考えや選択など研究者としての歩みを綴りながら、どのような研究成果を挙げてきたのかを紹介している。

感想・ひとこと

気楽に読める読みものとしての面白さと、しっぽに関する生物学的知見の両方をバランスよく織り込んでいる。

初投稿日:2024年11月17日

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