働かないアリに意義がある
書籍情報
【メディアファクトリー新書】
- 著 者:
- 長谷川英祐
- 出版社:
- メディアファクトリー
- 出版年:
- 2010年12月
【ヤマケイ文庫】
- 著 者:
- 長谷川英祐
- 出版社:
- 山と溪谷社
- 出版年:
- 2021年9月
アリやハチなどの真社会性生物の世界を、ときに私たちヒト社会にたとえながら解説した話題作
働き者の代名詞のようにいわれるアリだが、「7割ほどのアリは巣の中で何もしていない」という。この俗説とのギャップだけでも興味を引くが、その「働かないアリに意義がある」と言われれば、どんな意義があるのか知りたくもなる。これは秀逸なタイトルだと感じた。
働かないアリの意義は、第2章までで明らかにされる。「上司」のいないアリやハチの社会で、働くものとそうでないものはどのようにして分かれるのか。反応閾値というムシたちの「個性」がやさしく解説される。
さらに、その「個性」の必要性も語られる。コロニーには卵の世話など短い時間でも途切れてはいけない仕事があり、またアリやハチにも「疲労」があるそうだ。こうしたことからコロニーの存続のためには「個性」が必要だという。
第3章では、アリやハチなどの利他行動の謎に迫る。「血縁選択説」や「群選択説」が紹介されている。
他には、さまざまな社会寄生や、驚くような生殖などが紹介されており、生物のもつ残酷さや生命の不思議が浮き彫りになっている。
著者は序章で、「本書を通じて真社会性生物の世界を、初心者の方にもわかりやすく紹介するのが目的です」と述べている。ムシの社会を、ときに私たちヒト社会にたとえながら解説した話題作。
ひとこと
私たちは多細胞生物であるが、この「個体」を、「細胞を単位とする群れ」として考察するところも面白い。
私はメディアファクトリー新書を読んでレビューを書いている。ヤマケイ文庫は手にとっていないが、目次が同じなのでおそらく内容もほぼ同じだと思う。
初投稿日:2014年12月23日最終加筆:2022年12月19日