わたしの すきな もの
書籍情報
- 著 者:
- 福岡伸一
- 出版社:
- 婦人之友社
- 出版年:
- 2019年2月
『婦人之友』で連載された気楽に読めるエッセイをまとめたもの
「本書は、『婦人之友』2016年1月号~2018年10月号に掲載された中から33篇と対談を加筆・修正したものに、書き下ろしの「光る泥団子」(42ページ)を加えたもの」とのこと。
対談は「恐竜の謎、生命の不思議」という題で、著者である生物学者の福岡伸一と古生物・恐竜学者の真鍋真が対談している。
内容は書名のとおりで、著者の「すきなもの」について綴っている。昆虫をテーマにしたエッセイがいくつかあるが、生物学エッセイ集という感じではなく、NDC分類も「914.6」(「日本文学」の「評論、エッセイ、随筆」)。自然科学の本として分類されていないが、福岡伸一の本ということで、ごく簡単に紹介することにした。
当サイトは自然科学の本の紹介サイトなので、まず、福岡伸一の最重要ワードである「動的平衡」にまつわるエッセイを紹介したい。
今回は「落款」をつくる話から、動的平衡の世界観をごく簡単に綴っている。この落款のデザインは、(このレビュー執筆時点で)婦人之友社のWEBサイトでも見ることができるが、著者はこの落款について「流れゆく水の渦巻き紋様にも、あるいは糾える縄模様にも見える。まさに動的平衡ここにあり」と綴っている。
動的平衡については、こう綴っている。「動的平衡とは、絶えず動きながらバランスを作りなおす営みのこと。私はそれが生命の一番大切な特性だと思っている。」(この後、もう少し説明が続く)
書き下ろしの「光る泥団子」は、つぎの二つの問いから始まる。
「第一問 土はなぜ黒いのでしょうか。」
「第二問 土の歴史は5億年。それはどんな意味を持つのでしょうか。」
この質問の後、地球誕生からの壮大な話が簡潔に綴られていく。
エッセイタイトル(テーマになる「すきなもの」の写真付)で1ページ、文章が2ページの気楽に読めるエッセイ。
ひとこと
書籍情報下のキーワードは一応「生命」としたが、もちろん「生命」について興味を持っている方が選ぶエッセイというわけではない。でも、このエッセイによって、「生命の一番大切な特性」と著者が語った「動的平衡」に興味を持った方もいるのではないだろうか。たびたび語られているので知っている方も多いと思うが、はじめて目にした方、そしてもっと知りたいと思った方には、『生物と無生物のあいだ』をおすすめしたい。