科学本の言葉–15–(大栗博司の言葉)
「学問には、何かを知ることによって、その先にある「知らない世界」が見えてくる面があります。学問の進歩は洞窟を掘り広げることに似ていると思います。目の前の岩壁に隠されているのが未知の世界で、そこを掘り進むことで知識が増えていきます。しかし、私たちが未知の世界として認識できるのは、掘っていくことで見えてきた壁のすぐ裏側に隠されている部分だけです。その先の奥深いところにも、知らない世界が広がっているはずですが、私たちはそれを知らないことすら知らない。そこまで掘っていって初めて、その未知の世界に対峙し、いままで問うことすら思いつかなかった謎に出会うのです。」――大栗博司
上記の言葉が記されているのは、『重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る』。この本は、「重力は弱い」などの「重力の七不思議」から説き起こし、アインシュタインの相対論やスティーブン・ホーキングの仕事などを解説し、量子力学の基礎にふれ、いま究極の理論となることが期待されている「超弦理論」までを辿ったもの。
「学問の進歩は洞窟を掘り広げることに似ている」
重力の研究もそのようなものだそうだ。ニュートンが掘り広げ、アインシュタインが掘り広げてきた「洞窟」を、今も天才的科学者たちが掘り広げている。そして科学者たちは、「未知の世界に対峙」している。今、どのような世界が見えてきているのか。本書は、その片鱗を読者に見せてくれる。
いま、重力の研究は、「第三の黄金時代」と呼ぶにふさわしい活況を呈しているようだ。その研究の一端を垣間見ることができる本が、『重力とは何か』。この本を読み進め、 重力の謎を追い続けてきた読者は、そのクライマックスで、「どんでん返しにあう」。そこに登場するのは、「ホログラフィー原理」
「ホログラフィー原理」によると、空間は「ある種の「幻想」だと言える」という。
- 著 者:
- 大栗博司
- 出版社:
- 幻冬舎