記憶力を強くするーー最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方
書籍情報
【ブルーバックス】
- 著 者:
- 池谷裕二
- 出版社:
- 講談社
- 出版年:
- 2001年1月
記憶のしくみを分子レベルで解説し、記憶力を高めるアドバイスをする
記憶に深くかかわる脳部位「海馬」の専門家が、細胞レベルや分子レベルで記憶のしくみを解説。海馬の概要解説や記憶の分類からはじめ、神経細胞やシナプスの性質、長期増強(LTP)というように順を追って解説していく。シナプス可塑性がよくわかる。
幼児期の記憶がない理由
生まれたとき、海馬のなかの「歯状回」は未完成だそうだ。歯状回はおもに生まれたあとにつくられ、海馬がほぼ完全な形になるのが2〜3歳くらいと考えられている。このためエピソード記憶ができないという幼児期健忘がおこるという。
なぜ興味をもっていることは覚えやすいのか
覚える対象に興味をもつと、海馬はθ波をつくるそうだ。海馬がこのθ波をだしているとき、長期増強(LTP)が起こりやすくなるという。この長期増強(LTP)が記憶の重要なメカニズムと考えられており、本書では詳しく解説されている。もちろんθ波の説明もあり。
記憶力を高める「魔法の薬」!?
「NMDA受容体にカルシウムイオンが流れやすくなれば、記憶力が増強されるはず」という考えに基づき研究した著者らは、「K90」という物質に注目する。このK90の作用もミクロな視点から解説される。
ひとこと
2001年に刊行されたロングセラー。記憶の脳内メカニズムを知りたい人におすすめの本。専門用語もそれなりにでてくるが、神経回路についての基礎知識が得られるので、他の脳の本を読むときにも役立ちそう。
初投稿日:2014年09月27日