生命の逆襲
書籍情報
- 著 者:
- 福岡伸一
- 出版社:
- 朝日新聞出版
- 出版年:
- 2013年4月
人気を博する福岡伸一による、気軽に読める生物学コラム
本書は、週刊誌「AERA」での福岡伸一の連載コラムをまとめ、再編集したもの。週刊誌の連載らしい、人に話せるような「トリビア的」なものを含む55の生物学コラムがある。福岡伸一の本のなかには、「動的平衡」という生命観をメインテーマとする本も多いが、本書はそうではない。動的平衡という言葉はほとんど登場しない。
「生命の逆襲」という書名は、全体的な内容とは関係していない。コラムのなかに「生命は逆襲のチャンスを待っている」というタイトルのものがあり、それを書名にしたというところだろうか。そしてこのコラムがとても興味深い。「人間だけに心の働きがある」という考えに疑問を呈する内容だ。巨大爬虫類コモドオオトカゲ(またの名をコモドドラゴン)が、それよりも巨大な水牛をどうやって倒すかという話なのだが、コモドオオトカゲは「待つ」という「高等な心の作用」を働かせているように見えるのだ。ただ待つだけでなく、「時限爆弾を仕掛けた上で、その結果起きるであろうことを期待して待っている」のだという。このコラムよりひとつ前の「キアゲハの幼虫の身に何が起きたのか」というコラムにも、鳥たちが「待つことができる」という著者の考えを示すエピソードが紹介されている。
他にも、蝶、ホタル、カマキリ、カタツムリ、ウーパールーパー(本名はアホロートル)、象、羊、カワウソ、蚊など、さまざまな生き物たちの話が登場する。たとえば、「カマキリというシュールな存在」では、現代美術家の池田学の話題からはじまり、カマキリの外見、伝説や謎、そして「ハリガネムシのパラドクス」と話を展開していく。
身近な肝臓の話題もある。「肝臓は飲んだあとに「締め」を欲する」「肝臓は臓器の中の家父長である」「レバ刺しのレバー色の正体」といったコラムがある。
「寿命を制御する遺伝子」として話題になった「サーチュイン遺伝子」の「狂騒」にまつわるコラムもある。福岡伸一のエッセイではおなじみの画家「フェルメール」の話題もあり。
ひとこと
ひとつのコラムあたり4ページ。