文系人を科学本へと導く大ベストセラー『生物と無生物のあいだ』(福岡伸一・著)
福岡伸一の代表作『生物と無生物のあいだ』(2007年出版)は、すでに88万部を超えているようです。2023年11月に発行された『森羅万象』(福岡伸一著)の著者紹介に、そのことが記されていました。それから1年以上が経つので、部数はもっと伸びていそうですね。
科学本(ポピュラーサイエンス)がシリーズではなく単体で100万部超えに近づいているというのは、異例の大ヒットです。でも、そのことに驚きはありません。上述の本で88万部超えを知ったときに思ったことは、〝やはりおもしろい本は売れ続ける〟ということ。科学本(ポピュラーサイエンス)がもっと盛り上がってほしいと思っている私は、ほんのちょっとだけど嬉しい気持ちになりました。
科学本が盛り上がれば、おもしろい科学本がもっとたくさん世に出てきます。科学本に世間の注目が集まれば、今よりも多くの人が科学本を手に取るようになります。たとえば、かつての私のように、自分と科学本は無縁だと思って見向きもしなかった文系人も科学本を読んでみようと思うようになるはずです。そんな盛り上がりは、きっと意義深いことだと思います。なぜなら、科学本から得られる知見は、読者の世界観を更新する可能性を秘めているから。
『生物と無生物のあいだ』のおすすめレビューの一つに、こう書きました。「もしかすると、これまでとは異なる新しい生命観で世界を見るようになるかもしれない。」と。このように書いた理由は、同書を読んだときに、私の生命観が更新されたからです。自身の世界観を塗り替えてくれた科学本はいくつかありますが、その中の一冊が『生物と無生物のあいだ』です。
それに加えて、同書は読みものとしても、おもしろい。小説など物語が好きな人が楽しめる要素が満開です。『生物と無生物のあいだ』は、文系人を科学本へと導くのに最適な本だと私は思っています。
かなり前になりますが、「読書の幅を広げたい小説好きにおすすめの本(1)」と「動的平衡という生命観をまだ知らない方におすすめの本」というおすすめレビューを書きました。ほかに、福岡伸一の本のまとめも作っていて、そこでは、「稀に見る、抒情に富んだ科学本をつくりあげている生物学者」と紹介しました。まだ読んだことのない方に、福岡伸一の本をおすすめしたい。代表作であり大ベストセラーの『生物と無生物のあいだ』は、とくにおすすめです。