自己とは何かを免疫学の観点から考えてみたい方におすすめの本
免疫の意味論
- 著 者:
- 多田富雄
- 出版社:
- 青土社
時の洗礼に耐え、長年にわたり読まれ続けている本は「名著」と呼ばれるにふさわしい。「免疫の意味論」は、1993年に出版されており、多田富雄の代表作と言われるベストセラーであり、名著と評される一冊だ。
とくに本書の導入は、著者多田富雄の手腕が光る。有名な実験を紹介して、身体的に「自己」を規定しているのは免疫系か脳かを論じ、自己とは何かについて興味をもっている読者を一気に免疫学の世界に引き込む。その冒頭については、おおざっぱにではあるが書評ページで触れているので、ぜひ読んでみてほしい。
同著者には、『免疫・「自己」と「非自己」の科学』もある。この本は、書名に「自己」が含まれているが、免疫の仕組みの解説のほうに重点が置かれている。「自己」とは何か、「非自己」とは何かといった哲学的な側面にフォーカスしているのは、『免疫の意味論』のほうなので、こちらをおすすめしたい。
免疫をテーマにした本をはじめて読むときは、免疫の複雑さゆえに、一般書でも読み進めるのが大変だと思うかもしれない。それでも、自己とは何かについて考えてみることに興味をもっているのなら、免疫をテーマにした読書はおもしろいし、本書『免疫の意味論』は、ぜひ読んでおきたい一冊だ。
初投稿日:2024年06月18日