脳のなかの天使
書籍情報
【単行本】
- 著 者:
- V.S.ラマチャンドラン
- 訳 者:
- 山下篤子
- 出版社:
- 角川書店
- 出版年:
- 2013年3月
人間はただの類人猿ではない。著者が「人間に特有」と述べる「角回」と「縁上回」にスポットがあてられている
「人間は類人猿か、それとも天使か」。今日では人間が類人猿であることには反論ができないが、「ただの類人猿」ではないことを、角回と縁上回にスポットをあてながら論じていく。この二つの領域を含む下頭頂小葉(IPL)近辺には、ミラーニューロンが豊富に存在している。著者はこのミラーニューロンと「クロス活性化」に着目し、進化に照らしながら、人間を特別な存在にしているものを考察する。
共感覚は「クロス活性化」が起こっている
黒インクなのに、数字に色が見える。オレンジの皮にショックという情動を体験する。これらは共感覚とよばれる。とくに数字に色が見えるタイプの共感覚者は多いという。数字の視覚的外形を認識する領野と、色を認識するV4は、ともに紡錘状回にあり、しかも隣あっている。ここに「交錯」が起こると数字と色の共感覚者(「低位」の共感覚者)になると著者は述べる。この「クロス活性化」説をもとに、メタファーの神経メカニズムなども推察する。
人間らしさをもたらしたミラーニューロン。文化、自閉症、自己認識との関連
ミラーニューロンには、「他者の意図を読みとる」「模倣する」といった機能があるとされる。これらの働きは、言語の発達にも関与しているという。そして模倣と言語の発達は、技術や知識の伝達を可能にした。このようにして文化が発進し、人類進化が大躍進をとげた。そう著者は推察し、ミラーニューロンの重要性を説く。また、「他者の視点を必要とする」ミラーニューロンの特徴に着目し、自閉症や自己認識との関連をたっぷりと論じる。
美を感じる神経メカニズムを探る
グループ化、ピークシフトを中心に、著者の提言する美の普遍的法則が述べられている。これらも進化に照らしながら論じられる。
ひとこと
前作『脳のなかの幽霊、ふたたび』を読んでいると重複も多いと感じるかもしれないが、それでも大幅にボリュームアップされているので、新しい気づきがたくさんあると思う。
初投稿日:2014年09月06日