電波でみた宇宙ーー電波天文学入門
書籍情報
- 著 者:
- 森本雅樹
- 出版社:
- 講談社
- 出版年:
- 1972年11月
1972年に出版された本書は、電波天文学の急速な発展によってどのような宇宙の姿が浮かび上がってきたのかを、スペクトルのグラフを示しながら解説している
第二次世界大戦以後、電波天文学は急速な発展を遂げた。「電波」で見ることによって、「光」だけで見ていたときとは異なる宇宙の姿が浮かび上がってきた。その姿は、「ダイナミックな姿」だという。
本書では、「電波のカラクリ」と題して、「なぜ天体から電波が出るのか」というところから説明を始める。
「連続スペクトル (1)非熱的電波」
「連続スペクトル (2)熱的電波)」
「線スペクトル」
に分けて説明している。
上の3つの見出しの前に、「連続スペクトルと線スペクトル」という見出しがあり、連続スペクトルとは何か、線スペクトルとは何か、といったところから丁寧に説明している。たとえば、「連続スペクトル」の解説のごく一部を抜き出してみる。
「前にお話した電波らしい電波、すなわち電子からの電波を「連続スペクトル」とよぶ。線スペクトルがいくつかの特定の波長であらわれるのに対し、連続スペクトルは長い波長から短い波長まで「連続して」あらわれるのでこのようによばれる。」
また、スペクトルのグラフも示される。たとえば、「非熱的電波」の説明のところでは、「冒頭でお話した強烈な電波を出す天体「白鳥座A」は非熱的電波源の典型的なものである」という文章から始まり、「白鳥座A」や「おうし座A」のスペクトルが示されている。
つぎの、「熱的電波」の説明のところでは、「オリオン座の大星雲」のスペクトルが示されており、つぎのような説明がなされている。
「熱的電波の一例として冬の代表的星座であるオリオン座の大星雲をあげておこう。まん中で星が生まれ、生まれたばかりの若い明るい星からの光で電離された、そういうガスのかたまりがこの星雲である。グラフを見ていただこう(図・6)。さきの非熱的電波源と逆の傾向になっていることがわかる。長い波長では弱く、短い波長では電波の強さが一定である。これが熱的電波源の特徴といってよい。」
こうしたスペクトルのグラフを交えて解説しているのが、本書の特徴だ。
たとえば、「準星」の発見というのは私たち一般によく紹介される有名な話題だが、ここでも、スペクトルのグラフを交えて説明がなされている。(本書では、「準星」という呼び名が用いられているが、これは、「クェーサー」と呼ばれている天体のこと)
準星の話題では、見出しを並べると、「準星――その発見」、「準星――第一のおどろき」、「準星の電波――爆発」……といった流れで解説されていく。
この「準星の電波――爆発」のところでは、3C273のスペクトルのグラフが示されており、つぎのように説明が始まる。
「図・26でお見せするのは準星の代表選手3C273の電波の強さを波長に対してプロットしたグラフである。左の方が波長が長く右が短い。他の多くの準星もおおよそ似たような連続スペクトルを示す。すなわち、長波長で強く(グラフで左上がりの部分)、短波長では多少デコボコしている。これは、グラフの上に点線で示したように、いくつかの部分が合わさっていると考えてよい。」
「さて、そこでグラフの左上の部分から解剖してみよう。もちろん、この電波は「非熱的」電波である。したがって、シンクロトロン放射と考えてよい。……略……」
このような感じで説明が続いていく。(もちろん、「シンクロトロン放射」の説明は、最初のほうでなされている。)
本書では、「電波のカラクリ」を説明して、宇宙全体の話(オルバースのパラドックスから、膨張宇宙の話へ、他)、銀河、星の一生、惑星、というように話題が展開していく。
ひとこと
電波天文学の知見がたくさん得られる本。この本は、現時点では入手困難になっている。